代々木丈太郎の何だか良く判らないブログ

主にゲームブックについて語ります。他、北海道ネタ、ホリエモン、雑談など

ゲームブックがオワコン化した理由を考える──コンテンツがゲームブックである必要性が問われる

先日『七つの大罪ゲームブック迷いの森の冒険』のレビューを書きましたが

 

blog.gamebook.xyz

 このゲームブックは反響が大きく、世の中にゲームブックの存在を知らしめるいい契機となってくれそうです。

作者の藤浪智之先生のツイートによると

 

原作者の鈴木央先生も小中学生の頃いろいろなゲームブックを楽しんだ経験があるからだそうです。素晴らしい。

ここで筆者が素晴らしいと思えるのは、ゲームブックをその当時のままのものではなくて、現在の時流に合わせた作品にしたと言う点です。

プリミティブなゲームブックは「サイコロ」「バトル」「マッピング」が必要ですが、そのいずれもこのゲームブックでは必要としません。

これは重要な企画戦略です。ゲームブックがオワコン化した理由の一つには対象コンテンツが『ゲームブックである必要性がない』からだったと思われるからです。

ここ数年、販売が好調と思われるゲームブックは

 

人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される (脱出ゲームブック)

人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される (脱出ゲームブック)

 

 

都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック 修学旅行においで (YA! ENTERTAINMENT)

都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック 修学旅行においで (YA! ENTERTAINMENT)

 

この二つです。

そして先に述べた『七つの大罪ゲームブック』にも共通する特徴があるのです。

  • サイコロ不要
  • コンバットシステム(敵との計算を伴う戦闘)不要
  • マッピング不要
  • 人気コンテンツからの派生

まずサイコロですが、これはTRPGなどに代表されるテーブルゲームやボードゲーム、双六といったものから派生しています。

そもそも「火吹山の魔法使い」を世に送り出したスティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンは「数名集まってでしか楽しめないTRPGを一人で気楽に出来ないか」と言うアイディアを発展させたものです。

スマホは愚かゲーム機、パソコンやコンピュータゲームも普及していなかった当時、人気のあったテーブルゲームを一人でもできるようにした点で、革命的でした。

そのためブームは一気に火がつきましたが、花火のように一瞬で終わってしまいます

コンピュータゲームに取って代わられたのですが、その理由は「一人でサイコロ転がして計算して敵と勝負を繰り返すなんて面倒臭い、コンピュータにやらせたほうがいいじゃん」と言う点です。

そのとおりですよね。

つまりTRPGなどのアナログ諸ゲームを一人でやるならゲームブックではなく、コンピュータゲームが一番適しているのです。

現在であればオンラインでTRPGを楽しめることも出来ますし、サイコロ転がす類のことは一人じゃなくて、大勢で楽しんだほうが盛り上がりますよね。

逆に一人でそれやるのって哀愁感さえ漂います。(今となってはですよ)

その分野ではコンピュータゲームの前にゲームブックの出る幕はないのです。

 

じゃあ、ゲームブックは不要なのか?

そんなことはありません。ゲームブックの持つもう一つの一面性、『物語を読者が選択肢を選んで進められる』と言う点に注目してください。

無論これもコンピュータが代わりにできるところなんですけど、コンピュータでゲームブック作品を作るのは大変です。

物語を作る+コーディング

その二段階が必要です。

ゲームブックであれば、物語を作るだけでよくて、後は紙媒体を含む電子書籍と言うフォーマットが有ります。

なので開発の手間がゲームよりずっと少なくて済むのです。

ゲームと言うジャンルなら、iOS、Android、Windows、プレステ、Wii、XBOX……様々なプラットフォームで作る必要も出てきます。

でも紙媒体なら1種類でOKだし、電子書籍では確かにAmazonやGoogle、楽天などのプラットフォームで若干異なるでしょうが、ゲームほどの違いはありません。精々見栄えなどをチェックする程度なので負担はずっと軽く済みます。

なので、ゲームブックは物語と言う点が重要です。

 

物語コンテンツとの親和性は高い

読者が謎を解きながら物語を進めてエンディングを目指すと言う形であれば、様々な物語コンテンツとの親和性を発揮します。

まずは推理小説。通常の推理小説なら読者が読み進めていけば解答にたどり着きます。でもこれ、読者がその謎を考え、答えを探すということが容易にできるではありませんか。

そして物語であれば文章じゃなくてもいいのです。

日本が世界に誇れるコンテンツとして漫画が挙げられますが、漫画との親和性も非情に高く、おそらく商業的に成功した漫画ゲームブックはにゃんたんだと思います。

 

にゃんたんのゲームブック (ポプラ社の小さな童話―にゃんたんシリーズ)

にゃんたんのゲームブック (ポプラ社の小さな童話―にゃんたんシリーズ)

 

 筆者の知る限りでもにゃんたんシリーズは25作出版されています。これをヒットと言わずとして何と言いましょう。にゃんたんは児童用ですが、漫画は広い世代に人気のあるコンテンツが数多あるので、漫画ゲームブック制作はかなり現実的といえるでしょう。

例えばゴルゴ13なんていいと思うですよね。読者はゴルゴ13じゃなくて、依頼人でもいいわけでしょう。どうやってゴルゴとコンタクトを取る? 凶悪組織に狙われた、ボディーガードが欲しいがどうしよう? など……。もう、いくつでもゲームブックが制作出来そうですよ。

 ↓さいとう・たかをさんの漫画から派生したゲームブックの例

シティ・サバイバル―巨大地震が過密都市を襲う!!

シティ・サバイバル―巨大地震が過密都市を襲う!!

 

 

当然動画もOKです。これは撮影が非情に大変だとは思いますが、iPhone6でもかなり高品質な動画が撮影できるようになり、YouTubeが既にハイパーリンク機能を持っているので、動画撮影さえできれば個人でも制作が可能です。

www.youtube.com

動画が可能ということはアニメも理論上可能です。こっちこそ作るとなると労力と金銭的に大変だとは思いますが、人気アニメコンテンツなら商業的にも考えられるのではないでしょうか。

 

これからの新しいゲームブックに期待したいと思います。

 

以上、北海道からでした。

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2015年6月25日追記

この記事をアップしてから気づいたんですけど、 

ドラマチック謎解きゲームCD 真・女神転生 明ケナイ夜カラノ脱出

ドラマチック謎解きゲームCD 真・女神転生 明ケナイ夜カラノ脱出

 

 ↑どうやらゲームブックのCD版が出版される様ですね。

 

思わず↑このようにツイートしました。CDである必要性があるかどうかですね。音楽や音のゲームブックと言うのは勿論大有りです。

でもスマホで再生出来ないと、今どきキツイんじゃないかなあ。

ぜひともこの筆者の杞憂を吹き飛ばす作品であって欲しい!

ゲームブック復興への取り組みとして大変に感謝したいところです。

 

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