ゲームブックが苦手とする表現方法3選。でもテクノロジーの進化により克服されていくことでしょう。
こんにつは。
ゲームブック投稿サイトの管理者です。
創作はいかなるジャンルでも苦労の連続です。
それは当然として、ゲームブック作品ならではの苦労も多いのです。
とくに表現方法では、小説や漫画、動画といったものと比べて難しいものがあります。
その辺のところをまとめてみたいと思います。
※なお、あくまで筆者の個人的な見解ですので参考程度にお願いします。
目次
主人公が一人称
当初ゲームブックは二人称小説とも言われていました。
主人公が「あなた」や「君」といった二人称、すなわち読者があてがわれていたからです。
ところが時代が進むと、「もう二人称も飽きたな」という動きが出てきて、門倉直人さんの作品「失われた体」などはディノと呼ばれる人物が主人公となり、三人称で書かれています。
否、もっと遡るとファイティング・ファンタジーシリーズと双璧をなす、グレイル・クエストシリーズでも主人公はピップと呼ばれる青年に読者が乗り移るという設定で三人称にも二人称にも扱えるようになっています。
- 作者: ハービー・ブレナン,フーゴ・ハル,真崎義博
- 出版社/メーカー: 創土社
- 発売日: 2004/11/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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それゆえゲームブックは二人称でも三人称でもかけます。
ですが唯一、一人称では大変に書きにくい。
筆者も一人称のゲームブックは見たことがありません。
客観的、俯瞰的な視点
1Q84という小説をご存知でしょうか?
- 作者: Haruki Murakami,Jay Rubin,Philip Gabriel
- 出版社/メーカー: Knopf
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: ハードカバー
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これは村上春樹さんの書いた、月が2つある異世界に入り込んでしまいつつも紆余曲折を経た恋愛小説なのですが、シーンごとに主体の人物が変わります。
主人公が互いに相思相愛に発展する青豆さんと天吾くん、そして脇役の牛河氏の三人のそれぞれの視点で物語が書かれています。
そういう書き方がゲームブックでは非常に難しいのです。
基本的にゲームブックは読者が操る人物に起こる身近な出来事に特化してしか書けませんからね。
あるいは主人公たちが歩いていると、敵が行く手を阻む画策を練り、罠を仕掛けているシーンの描写とか。
それって普通の物語では主人公に迫りくる危機、すまわち物語のクライマックスとなりますが、ゲームブックでは読者自身が選択肢を選んでそれを乗り越えるので、単なるネタバレになっちゃうからです。
そういう客観的・俯瞰的な書き方が本当に難しい。
あくまでも暗示的な書き方しかできず、一般的な物語の盛り上げ手法は通じないのです。
全容を読者に伝えきれない
簡単なパラグラフ構成ならいざしらず、双方向のダンジョン散策や、近年の細かいパラグラフ遷移を利用したゲームブックはもはやコンピュータのプログラムにも近く、一人の人間で理解できる範疇を超えます。
ゲームブックをハッピーエンドまで読み進めることができたとしても、必ず通らなかったパラグラフがあるので、読者も特別な読み方をしない限りは理解できません。
すべてのパラグラフを読み進める必要のあるゲームブックは、作ることはできるでしょうが、ゲームブックである必要性が非常に薄れます。
またこれは余談ですが、作者も想定しないバグや、物語の展開、矛盾に気づかなかったりもするのです。
唯一理解できる方法は、虱潰しにパラグラフ遷移を書き留めて行くという途方もない作業を乗りこえなければなりません。
これが紙媒体のゲームブックならまだやれるでしょうが、電子化したアプリ版などは最初からすべてやり直す必要のあるものもあり、とうてい無理でしょう。
つとに筆者は自分でゲームブックを書いていていながら、自分でクリアできません。
本当に伝えたかった内容が、ある読者にはスルーされてしまう……。
こればかりは致し方ありませんね。
ヴォーカロイドやAIが解決
もちろんこれは筆者が現段階では困難と考えていることです。
なのでテクノロジーの進化により、事態は解決する可能性を持っています。
音楽の例で言うと初音ミクさん。
彼女はヴォーカロイドというジャンルを開拓しましたが、当初は到底人間が歌ったり、演奏できない楽曲を生み出しました。
ところがそれを人間が真似をするようになったんですね。
↑例えばこちら、初音ミクさんの名曲「千本桜」の演奏をバンドがやってしまったという実例。
この他にも「初音ミクの消失」など、当初は到底人間が歌えないだろうと言うことを狙って作られたのに、今は普通にカラオケナンバーとして収録されています。
これにより新たな人間の可能性が発掘されたのです。
同様の例は将棋のAIでも見られることで、将棋のAIの戦術を人間が真似たり、AIに対抗する策を人間が考え、新たな戦術を見出すなど、AIのお陰で人間が成長しています。
その辺の話はこちらに詳しいです。
人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質
- 作者: 山本一成
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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なので、ゲームブックもテクノロジーの進化により、様々な表現方法が可能になり、更には人間の表現方法まで成長させてしまうことでしょう。
まとめ
そんな感じで、ゲームブックといえば書籍と言うイメージがまだまだ強いのですが、もっともっとテクノロジーを盛り込んで、革命的な作品が世に出てくることを期待したいです。
以上、北海道からでした。