電子書籍版ゲームブックの盲点 パラグラフが多ければ必ずしも内容が濃くて面白いゲームブックが出来るとは限らない件
こんにちは。ゲームブック投稿サイトを運営している者です。
筆者はそれなりにゲームブックを買って楽しみ、レビューを書いています。
このブログでも
ゲームブックレビューというカテゴリにまとめてあります。
でもプレイした作品全てのレビューを書いているわけではありません。
中には「う~ん」と首を捻りたくなる様な作品もあるからです。
まあ…言ってみれば「クソゲー」の部類に入るかもしれません。
であればその内容をこの企画の中で書き綴るべきでしたが
結局「ゲームブックは素晴らしい!」ということしか書いてません。
そういう意味で失敗しましたが、気にしないで行こうと思います。
目次
興味津々の作品
ふとしたことで世界観や登場人物、選択肢の全てが不自然な作品に巡りあったことがあります。
主人公がとある状態に陥るのですが、その割には普段とほぼ変わらない行動をするんですよ。一体その設定は何なんだろうと。
おまけに盗んだり、万引きすると言ったような選択肢が散見され、警察に捕まるような展開が幾つか想定されていたりとか。
逆に筆者は「なぜこういう展開が?」と興味を引きました。
いえ、偉そうなことを言うつもりは毛頭ありません。筆者もゲームブックを作っています。同じようなことをやらかしているとも限りません。
「人の振り見て我が振り直せ」です。
筆者の電子書籍で販売している作品を再度プレイしてみたんですけど、やっぱり気になる点が幾つか見えてくるものですね。
で、先の「興味を引く作品」は結構パラグラフ数が多いんですよ。
ところが、その割には展開が思ったほど多くはないようなんですね。コレは不思議に感じました。
パラグラフ数が少ないのに充実
それで逆に思いつくのがこちらの作品
銀行員ゲームブック バンカーズクエスト (SHINKIGENSHA GAME BOOK)
- 作者: 高平鳴海,ビッグ錠
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2015/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
これ、総パラグラフ数は166しかないんですよ。
火吹山が400、七つの大罪迷いの森の冒険が301、暗黒城の魔術師でも200あるんです。
166しかないパラグラフで冒険の分岐が物凄くリッチにあるんですよね。
選択肢によってホント登場人物や、主人公の人生が激変しますよ。驚愕です。
おそらくこちらの「失われた体」
と言う作品で使われている技術が使われているのかなあと推察します。
作中のパラグラフは、曖昧な表現のものと詳細な描写がなされるものとに明確に区別されている。たとえば、相反する2つの魔力を抱えた主人公ディノンをさいなむ苦しみは、さまざまな場所のさまざまな環境で発生し得る。そのため、この苦しみを描写したパラグラフで状況を詳細に叙述すると、前後の内容と食い違いを生じる恐れがある。よって、このようなパラグラフでは意図的に表現を曖昧にすることで、多様なパラグラフに矛盾なく接続できるようにしている
同じ出版社だし、編集の方も同一。(いやスイマセン。良くわかりません)
パラグラフ遷移の構成がかなり高度であることには違いありません。
コレなんて凄いすよ
パラグラフ数が少ないのに世界観やゲーム性が優れている代表作としては筆者はコレを挙げたいと思います。
幻術剣闘士「死の地下闘技場」
FT新聞特別掲載ゲームブックダウンロードより(FT書房さんのサイトに行ってみてください)
FT書房さんのミニゲームブックです。
これはパラグラフ数がたったの21しかありません!
でも主人公が置かれた境遇から生き延びるためにあらゆる手段を使う選択の多さやゲーム性に富んでいることに感心しました。
筆者がゲームブック投稿サイトを立ち上げるきっかけの一つとなった作品です。
無料ですし面白いのでお勧めですよ。
ゲームブック電子書籍版の弱点
パラグラフ数を少なくしようと言う試みは紙媒体では重要です。
コストがかかるからです。
でもどれだけページ数が増えても然程問題とならないのが電子書籍。
そのため、電子書籍ならではのゲームブックは饒舌なパラグラフが量産される可能性があります。
筆者も自作ゲームブックを作るときはそれを自覚しています。
これはいい面と悪い面を併せ持っています。
いい面はもちろん、いろいろな展開を盛り込むことが出来るという点。
悪い点はパラグラフ数の割には中身が薄い作品に成り下がる危険性を伴うところ。
パラグラフ数に限りがあるからこそ、「どうしたら面白くなるだろう」と言うことを作者は必死で考えることでしょう。
その思考過程が大幅に削がれてしまうのではないでしょうか。
人生も同じじゃないですかね。有限だからこそ、実りあるものにしようと人は努力する。
永遠の命を手にした途端、時間というものが無価値になり、ダラダラとした毎日を過ごす様になるのも容易に想像がつくところです。
ゲームブックを電子書籍で作ると言う時代になり、かつて筆者は「パラグラフ数を気にしないで作れる!」と喜んだものでした。
でも先の「バンカーズクエスト」などの例を顧みるとパラグラフ数に関しては紙媒体を作る時と同じような意識でいた方がいいんじゃないかな、と思い直したのでした。
以上、北海道からでした。