代々木丈太郎の何だか良く判らないブログ

主にゲームブックについて語ります。他、北海道ネタ、ホリエモン、雑談など

「ソーサリー」や「火吹き山の魔法使い」などの英語版人気ゲームブックアプリが日本語訳されない理由は5つほどある話

こんにつは。

ゲームブック投稿サイトの管理者です。

先日このようなエントリをしたためました。 

blog.gamebook.xyz

ゲームブック最高峰とも評判・人気の高い「ソーサリー」の4部作がアプリ版ですべて揃ったのはいいですが、英語版しかないので、

日本語版のリリース予定はありませんか?

と聞いてみました。

blog.gamebook.xyz

↑以前TinManGamesに同様の質問をしたら

翻訳にコストがかかり、やってみたことはあるけど採算とれない

と言う理由で残念だけどできないとのことでした。

そこで今回は、キャンプファイヤーと言うクラウドファンディングサイトは手数料5%に引き下げられたからどうかと聞いてみました。

ソフトメーカーのinkleから早速返事が来たので、ご報告いたします。

 

目次

膨大な語句

ソーサリーは4部作の超大作。

ワード数は200万にも迫る分量だと言うのです。

ここで着目点はレターじゃなくて、ワードと言うところ。

つまり文字数ではなくて、単語が200万と言っているのです。

日本語では文字数で換算しますね。

一冊書き上げるのには大体10万字が必要と言われています。

それが単語となるともっと文字数が多くなります。

ざっと考えても6,7倍にはなるんじゃないでしょうかね。

つまり日本語の字数の感覚で言うと

200万 * 6 = 1200万字

と言うとてつもない分量の大作を翻訳しなくてはいけないのです。

これは物理的に無理じゃないでしょうかね。

パラグラフ遷移が煩雑

ゲームブックは順番に物語を読み進めるわけではないのはご承知の通り。

パラグラフと呼ばれるシーン毎にあっちへ行ったりこっちへ行ったりします。

選択肢によって様々な流れが発生しますが、翻訳者はその流れも掴んでおかねばなりません。

翻訳って単語や語句ごとに訳すのではなく、文全体や文章全体、或いは物語全体を把握した上で訳さねばならないことがあります。

例えば「have」という単語。

日本語訳は「持ってる」とか「所有する」と言う意味合いで取られがちかと思います。

でも意味はそれだけじゃないことも中学校で習うじゃないですか。

New Horizenのエレン先生に教わりませんでしたか?

  1. I have a pen.
  2. I have a cup of coffee.

上記文章で1は持っている、2だと飲むと言う意味に訳しますよね?

同じhaveでも全く別の意味になります。

なので「have」だけ眺めていては正しく翻訳できないのです。

inkを理解しなくてはならない

Sorcery!はinkleの提供するツール「ink」で書かれています。

上記に述べたようにこのツールで物語が遷移するのでこのツールやツールで書かれるスクリプトを理解しないと流れが分かりません。

要するに翻訳者は英語力・日本語力のみならず、inkと言うツールの仕組みや書かれたスクリプトも理解する能力が要求されるのです。

これは余程スキルのある人じゃなくては出来ることではありません。

チェックをどうする?

inkleはゲームのクオリティには非常に拘っています。

描かれるグラフィクスは美しいアニメーション処理が施されますし、流れるBGMや音響も場面にマッチした心地よいものです。

自ずと文章も高品質な物が要求されます。

上記条件を乗り越えて何とか翻訳をしたとしても、それがinkleの考える水準を満たしているかどうかをチェックする手段はどうするのか。

チェックする側としても前述の膨大で高度な精度の作業が必要となります。

クラウドソースの利用は?

ユーザーからクラウドソースを利用してはどうかと言う声があったそうです。

クラウドソースはネット上に英文を晒し、それをボランティアの有志たちで作業をしていこうというものです。

ある意味Wikipediaも似たような感じですよね。

誰がというわけでもないけれど、記事は有志たちで書かれています。

ただこれも弱点があり、Wikipediaが時事的なニュースが流れると修正合戦になったり、ウケを狙った編集合戦が行われたり、保護されたり、削除されたりします。

ましてや品質を保てるかどうか。

そしてゲームブックはネタバレしちゃうとマズイ媒体なので、ネットで晒した時点でゲームの価値が暴落してしまいます。

なのでクラウドソースの実現は無理なのです。

まとめ

以上のように

  • 採算が取れないこと
  • 膨大な作業量であること
  • 翻訳者に求められるスキルが高すぎること
  • チェックする作業量も膨大であること
  • 秘密裏になされなければならないこと

と言うような理由で英語版ゲームブックアプリは日本語版がリリースされません。

恐らく今後も出てこないでしょう。

例外的なのはLifelineシリーズ。

このように多国語展開されるゲームブックは

  • 日常会話程度の平易な文章
  • 二択だけで物語が分岐する構造のもの
  • 画像なしでテキストだけのもの

に限られるようですよ。

「火吹山の魔法使い」や「ソーサリーシリーズ」をアプリでプレイしたい方は英語の勉強と割り切って、ググりながらプレイしてみて下さい。

 

以上、北海道からでした。

 

さて、あなたはどうする?
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