ゲームブックを電子化にするメリットを制作者側からの視点で述べてみる。~(5)手間やコストを大幅に削減~
こんにつは。
ゲームブック投稿サイトの管理者です。
近頃はゲームブックを電子媒体でリリースすることのメリットを書いています。
今回は月並みですが手間やコスト削減についてです。
あらゆる流通経路で効率化が図れるということはどなたでもご想像できるかと思いますが、筆者は
- 印刷会社
- 小売店
- ネット通販
と言う、恐らくモノを販売するにあたり
- メーカーで作られて
- 店で並べられて
- 運送会社に依頼して配達
と言う全ての工程に携わる仕事をしてきたので詳細が分かります。
モノではなく電子媒体でユーザーに提供できるということがどれほどイノベーションに優れているかということを訴えたいと思います。
目次
在庫という概念
皆さんもプリンタなどでご想像の通り紙媒体なら印刷する必要があります。
例えば書籍なら三万部売れればそれなりにヒットです。
じゃあ、三万部ってどれほどの在庫なのでしょう?
(実のところ筆者も今から計算いたします)
まず新書は一般的にJIS規格でB6サイズ(128×182mm)です。
厚さは15mmとしましょう。
257×364×高さ210mmの箱に56冊入りますから
30000 / 56 ≒ 536
段ボール箱536個分です。
ではそのダンボールを納めておくのに必要なスペースは約2.6×3.7メートルのスペースに5,6段で積み上げる形になります。
一般的に物流ではパレットと呼ばれるフォークリフトで運ぶための荷役台に積まれて管理されます。
物流のパレットで主に使われているサイズは1100×1100×144mmなので、7段積みでに換算すると6枚ほどになります。
パレットに積まれた商品を間近に見るには、コストコやホームセンターの資材置き場などをご覧になると良いでしょう。
これが10万部売れたら3倍以上なので、20枚ほどのパレットに積まれることになります。
20枚のパレットを置くスペースってかなり大きいですよ。
コストコで確認してみて下さい。
大ヒットすると、まさに嬉しい悲鳴へと変わるのは容易に想像できますね。
印刷します
じゃあ、三万部を印刷しましょうと言うことになりますと、材料が必要です。
少なくとも前述の分量の紙が必要です。
はがき印刷のように仕上がりサイズに印字していたらとても三万部なんて刷っていられないので、B全(或いはB2)に面付けと呼ばれる何ページもまとめて印刷し、あとで断裁と呼ばれる方法で冊子に適した形で切断します。
なので原料の紙なんて人力で持ち上げるとか不可能ですよ。
もの凄くでっかい印刷機で印字します。
インクジェット印刷が普及しているので想像がつきにくいでしょうが、印刷機は芋版画みたいに、版を作ってインクを付けて刷る仕組みです。
なので版を作る製版という作業も必要で、B全ともなるととても版が重く、印刷機に取り付けるだけで重労働。
数十分はかかるんじゃないですかね。
それで、インクジェットプリンタですらカスレたりしますけど、印刷機の刷りもカスレたり何だのするわけですよ。
なので印刷機のオペレーターの方が常にチェックして、インクの量を調節したり、圧力など様々なパラメータを調整するんですな。
なので製品以上の紙、インクが必要なんです。
製本します
印刷されたら乾かします。
なので、急いでって言われても物理的に無理ゲーなんですよ。
印刷機のスピードもありますしね。
チラシ印刷の場合は輪転機と呼ばれる乾燥機までついている仕様なので乾かす必要はなく、印刷されたホヤホヤのチラシは触るとほんのり温かいくらいですが、書籍の場合は枚葉機と呼ばれるタイプ。
芋版画と理屈は一緒なので乾くまで待つしかないんです。
それを書籍の形状にするには、B全の紙を所定の方法で折って断裁して……となるのですが、細かく書きますと
- 断裁(裁ち落とす)
- 折り(ページが連なるように折る)
- 丁合(順序よく並べる)
- 綴じ(無線綴じ、背を糊で固め表紙をつける)
と言う工程を経ているのです。
例えば、3の丁合いでは落丁乱丁に気をつけなくてはいけません。
落丁はあるべきページの塊がないこと、乱丁は順序が間違えていることです。
よく書籍の最後の方に「乱丁・落丁はお取替えいたします」と言うのはそういう意味です。
何で素直に「ページがなかったり、順番が乱れていたときはお取替えいたします」と伝えられないんですかねえ……。
印刷専門用語で言われても意味わからんですよね。
あと筆者はA4の表紙込み16ページ物なら少し製本した経験がありますが、工場で働くというのは実に肉体労働なんですよねえ。
非常に体力を使います。大変ですよ……。
小売業者が売る
以上のようなメーカー、つまり印刷会社での工程を経て、最初の方で述べた様に在庫となります。
これを出版社で管理したり、いわゆる問屋で在庫を持ったり、印刷会社で保管するなどして、小売店から注文が来たら個別に出荷をするわけです。
で、小売店でも在庫の管理は悩みの種なんですよ。
商品にもよりますが一冊単位で発注できない場合も多いですからね。
在庫の項目で触れた通り、ダンボール単位で運送業者へ頼んだほうが、数冊単位でちまちま発注するより送料が安く済むのはご理解頂けるかと思います。
で、例えば56冊入ってきたとして、売場にどう陳列するか。
話題の書籍なら売場の一番目につくところで(専門用語ではエンドや磁石などと呼ばれる場所)展開します。
そうしたら既にそこに陳列されていた別の商品の在庫をどうするか?
その場所からずらしてしまうと売れなくなるわけですからねー。
まあ、書籍の場合は出版社に返本できることが多いので返品しますが、基本的に返品する場合は送料は小売店負担です。
そして漸く陳列できたにせよ、予想外のベストセラーだったりしたら売り切れて売場に穴が空くわけですよ。
それが各店舗で予想もつかないほど売れたら各店から出版社へ一斉に発注がなされます。
印刷の項目で述べた通り、すぐに印刷してって言われても日にちがかかるんですよ。
かなり手間の掛かる工程を経て書籍は出来ていますから。
お客さんによっては
何で品切れなんだ!!
って怒る人もいるしねぇ。
で、逆に売れ残ったりしたらそのまま過剰在庫で店の経営を圧迫します。
書籍は返品が可能な場合が多いですけど、雑貨などは返品出来ない事が多いので、値下げ処分をして、やっぱり利益を削ります。
在庫を持つと言うことは店舗にとってリスクを抱えていることなのです。
ピラミッドを積み上げる
話がそれますが、昔の小売店の経験談を少し。
当時はイケイケで商品を売っていました。
例えば、5個組のティッシュペーパーなど、特別なセールで198円で売るんですよ。
それ、専門用語でロスリーダーと言いますが、要するに売れば売るほど赤字で、客寄せパンダみたいな存在なんです。
お客様一名二個限り、千個限定
と言う様な限定表記は欠かせません
ホントに1,000個売れますからね。
当時5個組ティッシュペーパーは一つのダンボールに8個入ってました。
そのダンボールが1000 / 8で125個ですよ。
それを倉庫に収めるためにピラミッドのように高く積み上げるんですよ。
本当にそのダンボールの上を歩いて在庫管理です。
その頂上から見下ろす倉庫の物量は壮観なものがありましたねぇ。
今は本当にモノが売れなくなったなあと実感します。
ネット通販で送る
今の時代はリアル店舗よりネット通販ですよね。
これも注文が一日何件来るかによりますが、店舗によっては数百件から何千件と処理します。
- 注文が入る
- 商品をピッキング
- 送り状を印刷する
- 商品を梱包する
- 納品書などを同封する
- 送り状を貼る
- 商品出荷する
と言う流れを、注文の件数分ひたすら繰り返します。
Amazon倉庫の過酷さや、宅急便が消耗しているニュースでご承知の通り、発送するのも大変なんですよ。
住所が間違えていたり、何回運送業者に訪問させても不在の場合もあるし。
時間帯指定で少しでもずれたら怒る輩も居るし。
運送事故と呼ばれる、荷物がなくなるケースもまれにありますね。
その場合は再度発送しますよ。
そしてリアル店舗と同様、ネット通販でも在庫管理は大変で、品切れしたり過剰在庫にならないように出版社や問屋やメーカーに発注することが大切です。
勿論予想がハズレたり、出版社や問屋やメーカーも在庫を切らしたり、台風や諸事情で納期が遅れたり……。
小売業の抱える悩みは尽きないのです。
在庫管理不要と言うイノベーション
なので在庫管理不要と言う電子媒体はとてつもなく便利なものなのです。
お客の立場で言うと、ワンクリックですぐ読める、と言う程度なのでさほど実感がわかないと思いますけど、制作側から言えば上記で述べたほとんどすべての工程を考えなくていいのですから……!
もう、革命的に凄いことなんですよ。
品切れで怒られたり、販売チャンスを逃す(=機会ロスと言う)リスクもほぼ皆無。
筆者は本当に感動しています。
もう、ピラミッドを作る必要が無いんですからね。
無論電子書籍は電子書籍なりに苦労も多いみたいですけど、
どうかなぁ~。
上記の苦労を踏まえても、在庫管理の煩雑さには敵わないと思うけどなあ。
まとめ
そんな感じで、ゲームブックに限りませんし、電子書籍に限ったことでもないんですけど、コンテンツが電子化するというのは多方面で便利でイノベーション溢れる凄いことなのです。
以上、北海道からでした。