ゲームブックの歴史を書いてみます

ゲームブック

表題の通り、ゲームブックの歴史を書きますが……。

筆者の独自研究ですのでいろいろなご指摘はあるかもですが、優しくご意見下さい。

1.Consider The Consequences!

いや、まあホントに諸説あるんですよ。

まあでも実際に商業ベースというか、印刷された書籍媒体として出版されたのはこれではないかとTwitterでもっぱらの噂です。

筆者の英検二級レベルの英語力で訳すと

物語の人々:私は今新たに最古に知られるゲームブックを入手した。—それはこの二人の女性によって1930年に書かれた。

なんだそうですよ。

このことは、英語版のWikipediaに載っています。

en.wikipedia.org

作者はDoris WebsterとMary Alden Hawkinsの女性のお二人。

読者はHelenとJedとSaundersの三人の登場人物の役割を順に担い、選択肢を選んで読み進めていきます。

そして一人で遊ぶゲームとして、恋愛ゲームとして、一発芸として楽しめるみたいです。

機会があったらゲットしてみたいですね。

2.CYOA──きみならどうする?

黎明期のゲームブックは”Choose Your Own Adventure”、略して”CYOA”

日本で初めて発売されたゲームブックもこちらの日本語版と言えそうです。

日本語訳は「きみならどうする?」

きみならどうする?


ゲームブックをご存じの方は意外と思う方もいらっしゃるかもです。

でも恐らくこれが「初めての成功したゲームブック」といえるでしょう。

アメリカで1979年に生まれ、日本では1980年に学研(現・学研ホールディングス)から出版されました。

内容は主人公(=君)の状況の記述があり、それに対してどうアクションするかが選択肢として綴られています。

(例)
家から出発するなら、4ページへ進め
待ってみることにするなら、5ページへ
…読者の選択により物語は異なった展開を示し、最後には違った結末に辿り着くことになる。(Wikipediaより)

筆者は原本を手にしたことも見たこともありません。

絶版のためAmazonなどでは高騰しており、入手は困難なためです。

シリーズで6作ほど日本では出版されたようで、書籍で楽しめるゲームとしてアメリカでは暫く人気があったようです。

日本では、小中学生向けの割にはグッドエンディングを迎えることが難しいためかそれ程ブレイクしなかったようです。

3.TRPG──火吹山の魔法使い(ファイティング・ファンタジーシリーズ)

火吹山の魔法使いはイギリスのスティーブ・ジャクソン氏とイアン・リビングストン氏の共著で作成されたゲームブックです。

両氏はファイティング・ファンタジーと言われるレーベルを立ち上げます。略してFFなため、「何? ファイナルファンタジー?」と混同されることもあるかと思いますが、ゲームブック業界(そんなのあるの?)ではデフォルトに近い勢いです。

火吹山の魔法使い
バルサスの要塞

実のところゲームブックと言えばコレ! と言う方は多いと思います。

スティーブ・ジャクソン氏はさらに名作「ソーサリー」シリーズを執筆しており、4部作からなるこの作品はゲームブック界の最高峰とも言われる誉れ高い逸品です。

テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)、今のRPGの原型となったテーブルゲームを広めるため、或いは一人でも楽しめるようにと考えだされたのがこのシリーズです。

まだスマホは愚かゲーム機やパソコンですらまともに普及していなかった時代。皆こぞって飛びつきましたね。

内容としては上記CYOA同様選択肢を選んで物語を進めるのですが、

  • RPGの様に戦闘シーンがある
  • ダンジョン散策するタイプもある
  • アイテム入手などによるフラグ管理
  • 魔法を取り扱うタイプも有る

と言う画期的な要素を盛り込んでいました。

主人公(=読者)や出没する敵には体力や技術と言うパラメーターが与えられており、サイコロによる乱数を加味してバトルを展開するんです。

そして双方向とも呼ばれるのですが、ダンジョンが上手く選択肢と飛び先で形成されており、東へ進む、北へ向かう……と言った選択肢を選ぶことで、読者がまるでダンジョンをさまよっているかのような臨場感を表現していました。

つまり、ぐるぐる同じ箇所を回ることも可能な仕様になっているんです。
ドラクエの様なダンジョンを文章で散策する感覚は小説の域を超え、ゲーム機能を内包した書籍、まさにゲームブックだったんです。

敵を倒したり、ダンジョンを散策したり、あるイベントで成果を出せばアイテムや重要な情報を知ることが出来、それがゲームクリアに貢献すると言った仕組みも踏んだんに盛り込まれていました。

ゲームをクリアするにはサイコロ転がしたり、アイテム入手したらメモ、ダンジョン散策のたびにメモ、と言う事が必要でした。

今となっては煩わしい話ですが、当時はそれらの作業ですら楽しかったのです。

4.「14へ行け」──グレイルクエストシリーズ

先に述べたFF(ファイティング・ファンタジーですよ、念のため)シリーズがゲームブックの王道なら、脇道の道草の楽しみとして高評価なのがこのハービーブレナン著のグレイルクエストシリーズ。

暗黒城の魔術師
魔界の地下迷宮

パラグラフ14には「君は死んだ」と書かれているからです。つまりゲームオーバー。やり直しなさいという意味です。

主人公PIPは再度冒険に旅立つこととなります。この、死んでもなんどでもやり直すことが出来る、と言うのがゲームブックの醍醐味ですね。

そしてこのシリーズの特徴は魔術師マーリンの囁きと呼ばれる「語り部」の存在です。
冒頭の物語の序章やゲームルールの説明などが面白おかしく語りかけてくるのです。

この語り部のキャラが憎めないんですよ。
そのうち14へ行けが大前提になって

「そんなことをしたらどうなるかわかっているだろう? そうだ、14へ行け」

というように言い出す始末です。
ページを繰るワクワク感が堪らないですね。

5.漫画と迷路やなぞなぞ──にゃんたんのゲームブック

これまでのゲームブックは稀にイラスト挿入はありますが、主体は文章です。それに変わって出版されたのが「にゃんたんのゲームブック」シリーズです。

にゃんたんのゲームブック
ドッキリ!かいじゅうじま

特徴は上記のゲームブックと次の変更点があります。

  • 文章 → 漫画
  • 戦闘 → 迷路やなぞなぞ
  • 小中学生向け → 児童用

漫画媒体でのゲームブックと言う点が非常に画期的でした。

戦闘でサイコロ転がしたり、ダンジョンはマッピングしないと目的地に辿りつけない、と言うようなこともなく、子どもたちは夢中になりました。

にゃんたんのゲームブックシリーズはかなりヒットしたので今でもゲームブックといえばにゃんたん!と言う方も多いですよ。

6.メード・イン・ジャパン──展覧会の絵、送り雛は瑠璃色の

まあ、にゃんたんのゲームブックシリーズもメード・イン・ジャパンには違いないんですが、日本独自の特色が出始めたのがこれらの作品です。

展覧会の絵
送り雛は瑠璃色の

まず、「展覧会の絵」の主人公は吟遊詩人であり、武器を持ちません。手にした竪琴を弾き、音楽によって様々な効果を発揮します。

それにより敵と戦ったり、イベントに対処することで冒険を進めます。タイトルでピンと来た方も居るでしょう。音楽の「展覧会の絵」をイメージすると世界観が非常にマッチしますよ。

そして「送り雛は瑠璃色の」は古典や和歌が盛り沢山の和風テイストのゲームブックです。時間の概念があり、その経過により発生するイベントに手がかりを集めながら対処できるかが鍵です。

ちょっと好みは別れると思いますが先見性に優れた作品でした。

7.ファミコンから派生──冒険ゲームブックシリーズ

ファミコンをご存知でしょうか? 世界で一番売れたゲームソフトはスーパーマリオブラザーズですから、そのネイティブ機として有名です。

ファミコンを始めとしたゲーム機で提供されていたゲームを、ゲームブックとしてリリースするという画期的なコンセプトです。

ゲーム機もソフトも高い。でもゲームをしたりその世界観にもっと触れたい。そのニーズを満たしてくれたのがこのシリーズ。

凄いのはグラディウスと言うシューティングゲームのゲームブックも存在しました。

未知との戦い

ただ、日本経済はバブルへの道をまっしぐら。

ゲーム機もファミコンからスーパーファミコン、プレイステーションへと高価格高機能化して行ったのですが、それらが良く売れる時代になりました。

そのため、表現力の素晴らしさや、自動で殆どの処理をしてくれるコンピューターゲームへとゲームブックは取って代わられ、衰退し、オワコン化していきます。

8.ドルアーガ三部作──鈴木直人氏

ゲームブック作家といえば、先に述べたスティーブ・ジャクソン(UK)氏、イアン・リビングストン氏、ハービーブレナン氏が著名ですが、日本人で高名と言えばこの方、鈴木直人氏。

処女作は人気ビデオゲームタイトルであった「ドルアーガの塔」のゲームブック版。原作のビデオゲームに恥じない、人気、システム、文章力、演出力なども非常に高い評価を受けています。

悪魔に魅せられし者
魔宮の勇者たち
魔界の滅亡

ビデオゲームの原作を踏まえ、オリジナル要素が重厚なため、国産ゲームブックの最高峰と言われるほどです。(Wikipediaより転用・修正)

練られたマップの展開や、二人の仲間と冒険を共にすること、隠しエンディングの存在など、非常に斬新な内容のゲームブックになっています。

Black Onyx REBUILD

他、多くの名作を執筆しています。

9.復刻にかける1──創土社の奮闘

オワコン化を憂い、ゲームブック復刻への挑戦に多くの方が携わりました。

とりわけ精力的に活動したのがこの「創土社」と言う出版社です。発音は「ソードシャ」です。Swordの捩りで、稀にマークが剣になっていることがあるほどです。

つまりファンタジーのゲームブックの復刻版をメインに出版し始めたんですね。

「ソーサリー」シリーズや「グレイルクエスト」シリーズ、そして「展覧会の絵」や「送り雛は瑠璃色の」、「ドルアーガの塔」シリーズも出版しています。

一部加筆や修正、削除などされているため、往年のファンからは賛否両論です。

そして創土社はゲームノベルコンテストも実施し、ゲームブック作家の育成にも意欲的でした。
しかしゲーム機全盛のこの時代ではなかなか大ヒットにつなげることは困難だったようです。

10.復刻にかける2──iGameBookの栄枯盛衰

書籍ではなくiPhoneアプリで名作ゲームブックの復活と言う触れ込みで立ち上げられたiGameBook。

「グレイルクエスト」シリーズや「送り雛は瑠璃色の」の他、同人ゲームも参戦し、盛況を見せるかと思われていましたが、惜しまれつつ2015年3月でサービスを終了しています。

簡単に言うと、マネタイズ方法にいろいろ問題があったようですね。

代わりにと言ってはなんですが、入れ替わりで筆者はゲームブック投稿サイトをこの頃立ち上げました。

そのサイトも今リニューアル中です。

今しばらくお待ち下さい。

11.リアル脱出ゲーム──謎解きゲームブック

ゲームブック復興が困難を極める中で、当時人気のあったリアル脱出ゲームをゲームブック化したのがこちらのシリーズ。

人狼村からの脱出

謎解きがかなり難解なため、全員がゲームブックをクリアできるとは限りません。それでもゲームブック自体はスマッシュヒットをしてます。

ま、でもそれが夢中になれるとも言えます。人によっては数年かかって「クリア出来た」と言う方も。(筆者も全然クリアできませんでしたけどね)

イベントと連動して数々のシリーズが出版されています。

かなり若い世代の方にも親しまれているようで、ゲームブックと言えばこの「謎解きゲームブック」と認識する方も居ることでしょう。

12.人気コンテンツ──ゲームブック版の登場

数は少ないですが2015年には3作出版されました。「七つの大罪」「青鬼」「進撃の巨人」と言うマンガやアニメ、フリーゲームで人気のあるコンテンツのゲームブック化です。

豚の帽子亭の七つの大冒険
ウォールローゼ死守命令850

冒険ゲームブックでも実績があるように、人気コンテンツのゲームブック化は堅調なヒットが見込めます。

今後もこの傾向が続き、同じ出版社(講談社やKADOKAWA)のコンテンツのゲームブック化が望まれるところです。

13.SNSアプリ感覚──LIFELINE…

TwitterやLINEが人気を集めていますが、それに似たような感覚でプレイできるゲームブックアプリといえるのがこちらのシリーズ。


2015年度のiPhone有料ゲームで、日本と中国では一番だったとも噂される人気ゲームです。現にTwitterのTLには主人公タイラーのイラスト(想像図)が溢れています。

このシリーズの主人公は読者ではありません。タイラーやアリカと言う人物が読者へ助けを求めてきます。

読者は彼らと交信することにより、話を聞き、状況を把握し、考え、冗談を言い合い、相談に乗り、時には叱責し、指示を与え、主人公のミッション達成を手伝います。

晴れて主人公は助かるのか? それはあなた次第という触れ込みです。

このジャンルはこれから流行ると筆者は踏んでいたのですが、Lifeline制作会社は吸収合併され、その親会社は今後スマホアプリ作る予定がないと言う経営判断のため、続編のリリースが難しい状況にあります。

14.まとめ

謎解きゲームブック、人気コンテンツのゲームブック化、そしてLifelineに代表されるSNS風ゲームブック……。今後差し当たって盛り上がりそうなゲームブックはこの辺じゃないでしょうか。

オワコンと言われるゲームブックも、マンガやラノベのように一つのジャンルとして広く受け入れられる日が来ることでしょう。

それが筆者のミッションです。

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