幻想迷宮書店第一弾『悪魔に魅せられし者【ドルアーガの塔 第1巻】』をプレイしました。レビューを書きます。

ゲームブックレビュー

こんにちは。

ゲームブック投稿サイトリニューアル中の管理者です。

最近では往年の紙媒体の名作を電子書籍版でリリースする動きがあります。

その先陣を切ったとも言うべき、幻想迷宮書店さんがリリースしているドルアーガ三部作について触れておきましょう。

筆者は国産ゲームブック最高峰とも言われる「悪魔に魅せられし者」Kindle版 をプレイしました。

現状の電子書籍フォーマットは紙の呪縛があったり、ページレイアウトを固定できない(ページを画像扱いすれば可能らしいですが)などの問題が孕んでいるため、意外とゲームブックとの相性が心配されるところですが、そこは統括している方が優秀なため、筆者の杞憂に終わっていました。

そのことも含めて触れたいと思います。

未プレイでした

筆者はゲームブック作家であるとか、評論家と言っている割にはこの名作を手にとったことはありませんでした(!)

いえ、あの💦、創土社の復刻版をいつしか買おうと思っていたらグッドタイミングで幻想迷宮書店さんがKindle版でリリースしてくださったのでいいレビューが書けると思います。

何しろ原作のビデオゲームもやったことがないので、先入観なしにこの作品に触れることができるからです。

世界観と描写が卓越

まさに小説と言った文体がいいですね。

情景や登場人物・モンスターの描写が卓越しているんですよ。

端的に細かい動作が記述されています。「ヒカリゴケが群生している」「剣が一閃した」とか。

ヒカリゴケって本当に存在する植物ですけど、その実体を知らなくとも「光る苔だよな」と読者は瞬時にわかります。

剣が一閃の一閃って単語を知らなくとも、とどめをさしたと言う感じがよく伝わってきます。

読んでいて楽しいですね。これは小説ならではです。

鈴木直人先生の文章力・演出力の力量をまざまざと見せつけられました。

とりわけ五感を刺激する内容が素晴らしい。「ゴボゴボと泡立つ音」「耐え難い悪臭」「哀れな生物」

耳や鼻、そして感情にも言及して物語への没頭感が半端ないです。

ゲーム性と物語が深い

ストーリーやゲーム性も大変に奥が深いですね。

ドルアーガを始め女神イシター、カイ、そして冒険の途中で出会う様々な戦士や魔法使い、モンスター達。

原作のビデオゲームにはいない、この作品のオリジナルキャラクターも出てきます。

彼らとのやりとり、駆け引きも生半可ではありません。

用意周到な手を使って読者の前に立ちはだかってきます。

回答の糸口を手繰り寄せてみごと階上へと歩を進ませ、見事20階へとたどり着くことが出来るか?

実に見事なトラップと敵とのバトルが絶妙なんですよ。

ダンジョン散策していて、真正面から敵から襲われると思えば、逆方向から迫れば不意打ちを食らわせられるとか……。

そしてなぜタイトルが「悪魔に魅せられし者」となっているのか。

お陰でドルアーガ三部作のどれが第一弾目なのかわかりにくかったのですが、読了後に「そのタイトルしかないよなあ」と思い直したのでした。

正確なマッピングが出来る?

Wikipediaには出来るという記述がありますけどねー。

ドルアーガの塔は8×8のブロックでフロアが形成されており、それが60階あると言う設定で、文中の記述からマッピングして塔を散策していくというのがこのゲームブックの醍醐味なんですね。

でも筆者の印象では「距離」の記述がないことも多いため、それは無理だな、と思います。

(……でも「書けるよ」という方もいるようです。読む人によっていくらでも難易度が変化します)

無論クリアするために最低限必要なヒントをまとめる上で、マッピングは必須なんですけど、迷路のような状況に陥った時は敢えてマッピングをせず、パラグラフ番号だけを書き記し、「あ、ここまだ行ってないな」と言う判断で進みました。

邪道だと言う方もいると思いますが、筆者はそちらのほうが楽しめましたので!

編集力が凄い

さて、冒頭で触れたように電子書籍でゲームブックを表示するには一つ難点があって、端末によってレイアウトが変わるため、状況により選択肢がページをまたいで表記され、読者が見落とす危険性があります。

▲がパラグラフ終了の合図

いいアイディアですね。読者はこのマークを目印に、ページをまたぐパラグラフであっても見落とすことはありません。
紙媒体でも火吹山の魔法使いのパラグラフ1は、選択肢が「東へ行くか」しかないように思えて、実は次のページに「西へ行くか」の選択肢が有るというのは有名な話です。
まあ、ある意味それも「ゲームのギミックだよ」と言う人もいると思いますが……。

パラグラフ直リンクの用意

ゲームブックではフラグ管理をアイテムや読者にメモさせることで行っています。
この作品でよくとられる手法は、階上へ行くには番号の書かれた鍵を入手しなくてはならない場合が結構あります。
そのさいに、直リンクをクリックできるページを設けている所も大変便利です。
500パラグラフありますからね。紙媒体じゃあるまいし、電子書籍のページをいちいちめくっていられませんからね。

Kindle版について

実際のプレイ風景

スマホ片手にプレイは敷居が高いでしょうね。

スマホ画面で本文を読みながら、手書きでマッピングやメモをしていくか、或いはPC環境でKindleとメモやダイスのアプリを切り替えてプレイするかでしょう。

スマホだけで完結はキツイんじゃないでしょうか。

画面を切り替えてマッピング用ダイス用のアプリを使うとなると、恐らくKindleアプリはリロードしたり、挙動にウェイトがかかるはずです。

筆者は特殊な環境で、ディスプレイがダブルなんです。

本文をメインディスプレイ、メモやダイスを別のディスプレイで表示させればストレスもありません。

自動化について

ここで議論が出てくるのは、アプリでマッピングやメモ、戦闘を自動化してはどうかということ。
無論それは可能でしょうが、マッピングすることや戦闘をすること自体が楽しいというユーザーもいますし、開発が大変になるんじゃないでしょうかね。

今回ドルアーガの塔シリーズは三作同時リリースで、展覧会の絵も10日後にリリースを控え、かなりのハイペースで電子書籍がリリースされます。

ここがアプリと電子書籍の違いでしょう。アプリよりはずっと簡潔にリリースできる。

そして自動化を進めると、それならグラ〇ルとかパズド〇でいいんじゃね? と言うことに行き着くと思うんですよ。

その辺のバランスのもとに、手動でマッピングやバトルがあるのです。

お陰で「悪魔に魅せられし者」は400円という安さです。

RPGアプリは無料とは言っても実質課金でお金かかるプレイを想定してますから。

まとめ

総じて、ゲームの楽しさや物語としての世界観、編集力によるプレイのしやすさなどを考えると、大変面白くていい仕上がりになっています。

スマホネィティブ世代の方々にはマッピングや手動バトルやメモが受け入れられるか微妙かと思いますが、今でも黒板をノートに書くと言う作業をしているので、意外に大丈夫かもしれませんね。

ぜひ、プレイしてみてください。

国産ゲームブック最高峰に間違いはありませんから。 

コメント

タイトルとURLをコピーしました