「バンカーズクエスト」感想・レビュー。大人向けのエンターテイメント・ゲームブック。完成度の高さに驚愕

ゲームブックレビュー

こんにちは。

ゲームブック総合サイトの管理者です。

2015年に本格的なゲームブックが刊行されたので、そのときの模様をお伝えします。

七つの大罪や青鬼など、「既に出来上がっているコンテンツのゲームブックバージョン」というものは作られていましたが、これはゲームブックとして書き下ろされたコンテンツです。

さらに、銀行員(バンカー)のゲームブックという異色作です。

どんなもんかなあと筆者はペラペラめくりはじめたのですが、驚きました。

物語性・没頭感が半端ないすよ

日常の中の非日常といった感じです。つまり、銀行員と言う比較的身近な世界観を描いているわけですが、突拍子もない展開や事件に思わずのめり込んでしまうのです。

こんなにもエキサイティングな世界が銀行員と言う職務にはあったのですね。(いやゲーム用に誇張されているとは思いますけどね)

解説付きで銀行特有の専門用語が散りばめられたり、銀行のビジネスの詳細が描かれていたり、たいへん興味深く読み進めることが出来ます。

主人公は大方読書が想定している通り、バンカーとして地域中小企業と共に歩んでいくという人生を描くこともできれば、それこそ危険な人物と汲んでアウトローの世界も垣間見ることが出来ます。

人物も選択肢によって敵になったり味方になったり、死んでしまったり、深い関係になったり……。予想もつかない展開にビックリしますよ。

物語分岐がすごいたくさんあるんですよ。パラグラフ遷移が違和感なく紡がれていくような感覚で、様々な事案にグイグイ引きこまれていきます。

キャラクターが生きている

登場人物の設定が細かく、まるで実在しているかのようです。感情も豊かな人が多く、まるで各々の息吹さえ感じる様な動きをするんですよねえ。

如何にビジネスが人と人の関係で動くかというのも垣間見ることが出来ます。

パラグラフ分岐によっては主人公の出生の秘密を知ることが出来ますよ。

逆に知らないほうが良かったかもと思えたり、知ることでこの作品の全容が徐々に明らかになったり、飽きさせないですねえ。

パラグラフ数は166

これは少ないです。火吹山の魔法使いが400、最近のゲームブック七つの大罪では301、パラグラフ数が少ないと言われた暗黒城の魔術師ですら200ですからね。

で、書籍が手元に届いてからページを触ったのですが、薄いですね。見るとページ数は325。同じ新紀元社の「失われた体」は289ページです。冊子の厚さは同じくらいですから薄くすることでページ数を増やしたんですね。

パラグラフごとの本文が長いんです。それにより実に深い物語となっています。

でもパラグラフ数が少ないから物語の分岐や展開には乏しいんじゃないかなあとも思いがちですが、「どうやってこのパラグラフ数でここまで複数の物語分岐を散りばめることが出来たのだろう?」と思わず感嘆しました。

素晴らしい構成力です。パラグラフのフローチャートが的確なんでしょうね。

恐らく複雑な流れを組んでいるので作成が大変だったのではないでしょうか。

ミスが有る

そのためかミスが有ります。飛び先が誤って表示されているんですね。

筆者もプレイしながら突然とある人物と深く関わりあっている内容に飛び、「???」となりました。

でもゲームブックを多数研究されているドロシー!さんが

とTweetしてくれていたので、無事意味が通じるようになりました。

これ以外もバグがあるかもしれませんが 、どうですかねえ、筆者としてはそんな些細なミスなど気にならないほどこの作品の完成度の高さに舌を巻きましたね。

大人のエンターテイメント

この作品はR18です。取り立てて明記されていませんが、「バンカー」と言う題材から自ずと大人の人達が手に取ることでしょう。

恐らく80年代ゲームブック読者をターゲットにした作品です。無論この層は団塊ジュニアとも被るので、マーケットが広いと判断されたのでしょう。

つまり真面目な銀行員としての選択肢もありますが、さりげないエロスや主人公が犯罪に手を染める分岐も普通に存在します。

少年誌では表現できないことも自由に表現することで、とてつもない非日常や冒険に読者が旅立つことが出来ます。

こういう人生もありだなあとしみじみと感じます。

人生を表現できている

ゲームブックは選択肢を選んで物語の違った展開や、ゲームクリアを目指すわけですが、このゲームブックは実に様々なエンディングを用意してくれているので、何度も楽しむことが出来ることでしょう。

まさに筆者も同感する部分なのですが、人生をシミュレーションしているような気さえします。

歴史にifは存在しないとか、人生も時間を戻してのやり直しって無理ですけど、ゲームブックであればそれが容易に出来るんですよね。

小説やマンガや映画では到底体感し得ないことも、ゲームブックなら可能です。まさにこの作品はゲームブックと言う媒体だからこそとてつもなく面白いコンテンツに仕上がっています。

まとめ

新紀元社さんを始め、高平鳴海先生には、またこのような作品を発表していっていただければなあと切に思います。

大変面白い、素晴らしい作品に巡り会えたことに感謝したいと思います。

ぜひ、お読み下さい。おすすめの逸品です。 

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