こんにちは。
あるいはこんばんは。
ゲームブック総合サイトの管理者です。
さて本日はちゃなさんのネイキッドシリーズ第二弾の「ネイキッドサバイバー」のレビュー。
通常であれば第一弾「ネイキッドウォリアー」を書くべきですが、それはまたの機会に。
だいぶ前にクリアしたのでレビューを書くには再読が必要なのと、次作が気になったと言う個人的事情によるものです。
このエントリ執筆時点でネイキッドシリーズは3作品リリースされていますが、それぞれ独立しているのでどれから読み始めてもOKです。
本作から導入されている独自システムもあるので、それにも興味を惹かれましたのでね。
では、お読みください。
表紙
筆者の立場でデザイン云々申し上げるのはおこがましいことを自覚の上敢えてお伝えしたいと思います。
ネイキッドシリーズの各表紙は、徹底して絶妙なバランスをとりつつ、注目を浴びられると言う点で大成功なんじゃないかなと。
まあともかくも、可愛い女性の裸体というのはその、とりわけ男性からの視線が集まりやすいものです。
例えそれがエロくなくとも、勝手に妄想膨らませますから、ですね。
もとより女性の身体というものは、歴史的に世界各国を見てもあらゆるジャンルの芸術作品で頻出しているのは議論の余地がありません。
本来嫌らしいとか卑猥なものではなく、綺麗で高い芸術性のある鑑賞対象でもあるのです。
制作側としては単に、身ぐるみ剥がされて何もない状態で主人公は冒険に旅立つと言う設定を表しているに過ぎません。
本作はファンタジー・冒険物の王道を行くゲームブック。
でも悲しいかな。
どれだけ良いコンテンツでも、注目を浴びて手に取られることがなければ、結局そのまま闇に葬られてしまうのが現実です。
その事をすべて踏まえた上で、女性主人公にしてゲームスタート時は全裸と言う設定にしたのは大変に素晴らしい。
例えば「邪神ちゃんドロップキック」と言うアニメ化も実現した人気漫画があります。
人魚のように上半身は裸、下半身はコブラの容姿をした主人公なのですけど、長い髪でさり気なく(?)常に然るべきところは隠されています。
ギャグ漫画的なドタバタがとても面白いのですが、その露出して見えそうで見えない、安心してくださいと言う雰囲気が人気を影で支えているに違いはありません。
ネイキッドシリーズもお色気要素は皆無で、全年齢対照。
表紙の担う役割というものは、数ある書籍の中から見込み客に手にとってもらうこと。
そう言った点で、ネイキッドシリーズの表紙は非常に優れており群を抜いていると考えています。
左腕とブロードソード に寄る少し違和感あるポーズによるさりげない局部隠蔽が、非常にバランス良く通りすがりの読者には映ることでしょう。
冒険ものでの全裸で拘束
全裸というと、一般の人は変なこと想像したりもするのですが、拉致犯が捕まえてきた捕虜を逃げられないようにする目的もあるのです。
現に何巻だったか忘れましたが、ゴルゴ13でもそのような事に触れるシーンはありました。
と言うことは先日札幌に出没した全裸マスク男は秘密の犯罪組織に拉致され、命からがらで、ようやくのことで脱出してきたかも知れないのです。
でも彼も脱出すると言う選択肢を選んで正解でしたね。
クマが市街地に出没し鉢合わせするリスクを省みず。
彼は早急に警察に匿われるので、身の危険からは逃れられ、もう安心ですね。
今となっても全裸なのにマスクだけはしていた謎はベールに包まれてて、解き明かされておりません。
全容が明らかになるのは一体いつになる……。
は、話を戻します。
概要
あなたは名も無きとある女戦士。
かつては冒険者として活躍し、賞金首を上げたりして身銭を稼いできた。
そんな実力を持つあなただったが、なぜか一糸まとわぬ姿で拘束され監禁された状態で目覚めた。
そうだった……だんだん思い出してきた。
幼い少女にちょっかい出してた男ども。
少女を助けようとしてそのならず者たちに拉致されたのだ。
く、殺せ!
一生の不覚ッ!
だがこのコンギットの街で生き延びて行くと言うのは、死と隣合わせも同然。
一方でハイリスク・ハイリターン、数多のチャンスも眠っている。
あいつらめ、このあたしを殺さなかった事を後悔するなよ!
そして、待ってろよ名も知らぬ少女。
必ず助け出してやるからな!
読者はフラグワードを「ゼロ」にした。
フラグワード
珍しいシステムが導入されています。
その名もフラグワード。
ゲームブックは冒険記録用紙と言うメモ用紙に鉛筆やシャープペンシルと言った、消すことが可能な筆記具で最新情報を更新させながら読み進める作品が多数あります。
書籍なのにRPGが出来るというので黎明期には革命的ですらありましたが、一方でドリンクバーやセルフレジの様に、ユーザーが手を煩わせねばならないという短所があります。
自動ドアや放置ゲーム、さらにはルンバなどに慣れてくると、今更ドアを手で開けよう、ゲームでレベリングに励もう、掃除機をかけるのが辛くなってきます。
そこで読者は単語のメモ程度で読み進めることが可能なシステムを導入し、煩わしい条件分岐の案内は制作側で行いますよというのが本システムです。
「ゼロ」からスタートしますが、主人公がアイテムをゲットしたり、情報を得たり、何らかのイベントを達成させるとフラグワードは次々と変わります。
そのためフラグワードに関する記述が多くなり、物語の本筋とは離れた単語が並ぶ場面もあります。
20種程度羅列される場面もあり、「A」なら「B」と言うIF分約20個を読者が全てチェックすることになります。
これは表などに纏めて頂けると、「A]の部分だけ眺めるだけで判断がつくので読者負担がかなり軽減されるかなと。
もっとも下記のように矢印のみで「A」「B」が記された箇所もあります。
例 「とち」→「とかい」
これですと比較的チェックが楽です。
ある程度法則性があるようで、フラグワードがどの様に変化していくと物語の真相に近づけるのかをイメージできる側面もあります。
当初思い描いていたよりはフラグワードが激しく変貌するので「何だったっけ?」とい迷いがちなのでメモはした方が良いでしょう。
それも紙や鉛筆ではなくスマホのメモ機能の方が良いです。
スマホでKindleとメモを切り替えながら読み進める形が一番プレイしやすいかと思います。
フラグとは
当然のような前提で前項目を書きましたが……ここで言うフラグはゲームなどの文脈で使われるそれと同じ意味です。
ゲームブックではアイテムを見つけたりイベントをクリアしているとそのアイテムをゲットできたり、何か貰えたりします。
続けて読み進めていると対象物のありなしで分岐が分かれると言った仕組みが施されていることも多いのです。
しかしアイテム名を明記せざるを得ず、読者は何も知らない状態でも分岐条件を読むだけで「ああそう言うアイテムが必要なのね」と憶測できます。
その憶測をすると面白さが半減するなあと作者側の配慮からアイテムによる管理ではない方法もあったりします。
冒険記録用紙と呼ばれる用紙にチェック項目を記載し、出来事によりAの欄にレ点を入れよ、Bの欄にレ点があるなら消せ、などと文中に出てきます。
そして動いていると「Aの欄にレ点があるなら14へ行け、ないなら400へ行け」というように分岐させます。
この様にゲームブックというものは、IF文だらけ。
通常のゲームであればユーザーは意識する必要もなく、自動でやってくれます。
一見ユーザーが手動で行うのは煩わしさも持ち合わせてはいますが、そのルールを遵守して謎をクリアしたり、ミッションをコンプリート出来たときこそ面白いのです。
言うなれば現在ではコンビニで美味しいご飯や焼き肉弁当は食べられる一方で、敢えてキャンプ地で飯盒やバーベキューコンロを使って自炊で焼き肉を楽しむようなもんです。
ゲームブック黎明期には手間自体がエンターテイメントだったのです。
読了感
本作は前作ネイキッドウォリアーをクリアしていると少し有利に動くことが出来るのかもしれません? いや、どうかな??
バッドエンドがないと言うのも特徴。
ただ、エンディングによっては拍子抜けした、謎が謎のまま残る分岐があります。
筆者は最初それと思しきところにたどり着きました。
それでは当然納得できないのでやり直し。
街を散策したり、要所要所を行き来することがより良いエンディングを迎える鍵のようです。
同じ箇所でもフラグワードはかなり頻繁に切り替わるので分岐が変わっていきます。
何度か行き来する中で薄皮が剥がされていき、真実が明るみになっていくような、そんな感じ。
うっかりすると実質のパラグラフナンバー14と思しき、ゲームオーバー的な場面に戻されるのですけど、何回か周回しているうちにより深い真実に近づいていく仕組みになっているようです。
と、いうより周回前提のゲームデザインのようですね。
意外にも要所要所の場面でAと言う方法で切り抜けられた、これがベストだと思い込んでしまうと、物語の真相へはなかなか近づけないようです。
まさに試行錯誤。
敢えてこの選択肢はどうだろうと試すことも大事。
何度でも挑戦しましょう。
ゲーム性が高い
物語や世界観も凝っているのですが、さらにゲーム性も非常に高く書き上げられています。
作者のちゃなさんはTRPGはもちろんマーダーミステリーなども嗜んでいらっしゃるようです。
筆者はどちらもやらないので、逆に「こう言うしくみでゲーム性を高めているんだ」と感心しきりです。
バトルや運試し的な要素はなく、純粋に選択肢を選ぶだけなのですけど、選択する場面でトレードオフと言いますか。
こう言うメリットはあるけどおそらくああ言うデメリットがあるが、この場合どちらのほうがいいかと言うことを考えさせられる場面がよくあります。
エンディングを迎えるだけなら容易にたどり着くのですけど、伏線を回収できなくてたどり着いてしまったりします。
逆にまだエンディングに行きたくない、イベントや伏線を回収するにはどうしたら良いだろうといろいろ選択肢を試してみるというのが本作の醍醐味ですね。
パラグラフ100ってことなんですけど、想像以上にやりこまないと納得の行くエンディングまで辿り着けません。
充分に楽しめる作品に仕上がっています。
まとめ
ゲームバランスに優れ、フラグワードシステムで簡単なメモで読み進められます。
スマホで通勤途中に楽しんでも良し、寝っ転がりながらまったりプレイするも良し。
ただ、あんまり夢中になりすぎて、電車でのプレイで乗り越すことのないようご用心。
Kindle Unlimited対応でUnlimited会員なら無料で読めます。
そうではなくとも、価格はなんと破格の99円……!
どうぞお楽しみください。
ネイキッドシリーズ
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