こんにちは。
ゲームブック総合サイトの管理者です。
今回はこちら。
1987年に発行された作品の復刻版です。
筆者は5年前までこの作品の存在を存じあげておりませんでしたが、嬉しいけどショックと言う感想を持ちましたので書いてみたいと思います。
大失敗だよ
まず、やってみた感想は「失敗した~」です。
こんな素晴らしい作品をそれまで知らずに生きていたなんて勿体なすぎる!
何と言うことだ……。これほどとは!
では、その「これほど」 について、順を追って説明していきますよ。
主人公はディノン
あなたは今いる世界から、悪い魔法使いの仕業で異世界へと召喚されてしまいます。そればかりか、その魔法使いと体の交換を余儀なくされます。
つまり、あなたの体は魔法使いのもの。魔法使いの体はあなたのものです。ジャイアンみたいな事にはならず、体の取りかえっこなのです。
そのためタイトルが「失われた体」となっている訳です。わかりやすい……。
そしてあなたはその異世界ではディノン・バーム・テルス、略称ディノと呼ばれます。
男色ディーノさんとは異なりますよ。(間違える人はいない)
さあ、果たしてあなた、ディノは無事自分の体を奪還することが出来るでしょうか?
戦闘システムは一回勝負!
単純明快なんですよ。
プレイヤーは体力値と言う、ヒットポイントみたいなモンが与えられていますが、技術点の類はありません。
バトルの際はサイコロ二つを振り、その場で持ちあわせた武器のポイントを加算し、敵の戦闘値と比較。敵の数値が小さければ勝負に勝ち、大きければ負け、同点なら体力値を一つ減らし、敵の戦闘値もひとつ減らし、もう一度サイコロを転がします。
簡単に勝敗が決まりますね。いいですね。こういうの。このルールが1987年に編み出されたものだとは感動モノです。素晴らしいですね。
魔法自体が謎
技術点や運勢ポイントが無い代わりに知力ポイントと言うパラメータがあります。冒険の途中でしばしば運試しならぬ「知力チェック」を要求されます。
これはサイコロ二つを振り、出目が知力値以下であれば成功、さもなくば失敗となり、それぞれの選択肢を進むように指示されます。
そして「成功」したらマジックイメージと呼ばれる、何かを暗示したイメージを読者は見ることが出来ます。これが物語を進める上でのヒントとなるのですが、解読するのが容易では無いんですね。これもこの作品の謎を形成しています。後述するメノンが鍵となります。
メノン-持ち運びOKの魔術書
ソーサリーシリーズでは魔法の呪文の書を冒険に持ち運ぶことは禁じられていました。
それがこの作品ではマジックイメージをよりわかりやすく理解するための指南書として「メノン」と呼ばれる青表紙の魔法の奥義書を携帯する事になります。
物語での一日に対して一章分のみ読むことが許されます(知力ポイントサイコロ1個分と引き換えに更にもう一章読むことも可能)
これもまた古語的な良い文章なんですよ。読むのには難解ですけど。読み進めるうちに、マジックイメージがある程度理解できるようになります。
無論朧げな感じですし、断定ではなく象徴的なものなので、目安みたいな感じになるでしょう。
あなたはメノンの説明の意図を汲み、想像力を働かせてより良い選択肢を選ぶことが出来るでしょうか? この不思議な要素も物語を盛りあげてくれますよ。
ミスティックマークと言う変数
この作品にはフラグ管理と思われるパラメータがもうひと種類あり、ミスティックマークと呼ばれるアルファベットを取り扱います。
読者は指示されている通り、アルファベットを個数を含めて加減算していきます。冒険の途中でミスティックチェックと呼ばれるイベントが発生し、その条件に沿った選択肢へと頁を進めます。
このフラグとも変数ともつかない不思議なパラメータもまた謎の一つなのです。ネタバレは闇と炎の狩人 (ゲームブック 魔法使いディノン2)のあとがきで触れるということなので、それまで我慢です。
プレイしているうちにある程度の推察は出来るようになります。恐らくこのアルファベットが多くあると駄目だ、これがないと物語を前に進めることが出来ない……など。それを推察するのも一興です。
コンティニュー頻度が高い
体力値が0になるとゲームオーバーです。そうなれば最初からやり直しです。
でも戦闘で敗北だとそうはならず、かなりの頻度で所持品を没収されたり体力値や知力を再設定された上で、少し前のパラグラフからやり直すことが出来る仕様になっています。
冒険の途中で手に入れたアイテムを上手に使えば体力値もそんなに損なうことなく読み進めることも可能です。
これは恐らく、戦闘そのものより物語の謎解きを主流においているからでしょう。
謎そのものが絶妙なバランスで読者の前に立ち塞がりますよ(?)
世界観が深いですよ
総じて魔法の謎や、異世界の謎、ミスティックマークの謎、物語全体の謎など……。ひとつの謎が他の謎と絡み合っている作り方をしているようで、非情に不思議な感覚にとらわれます。
そして主人公の取り巻きのドラマがかなり深いんですよ。味方になったり敵になったり。味方と思われる存在の助言が正しいとも限らないし、いろいろ考えさせられますし、興味が尽きないです。
唯一の難点は、主人公に手助けしてくれる人物達やイベントの出現が唐突だったり、不自然な点が多いのではと思います。まあ、さほど気にならないと思いますよ。これほどの完成度の高い作品に、それは望み過ぎと言えそうです。
次作も期待がかかる
恐らくこの作品を読み進めた方は、病みつきになり、次作も読みたくなるでしょう。それほどの完成度ですよ。ぜひお試しあれ。大変にお勧めの作品です。
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