電子・アプリ媒体のゲームブックのジレンマ

エッセイ

ゲームブックはページごとに順繰り読みすすめるものではなく、選択肢に沿ってパラグラフ単位でページを飛ばして読む作品です。

そのため、ハイパーリンクのような、「タップ一つで次の項目にたどり着けるユーザーインターフェースは非常にいいんじゃないか」という意見は有るかと思います。

まあ、確かにそれは便利なのですが、それ以外にもHTML5を始めとするWebアプリは様々なことが可能です。

フラグ自動管理による円滑なパラグラフジャンプとか、変数を利用してのヒットポイントなどの自動計算とか。

そのため電子的なゲームブックは電子書籍がベストアンサーではないというのが筆者の意見です。

じゃあ、何が良いんだという話になってきますね。

ここでもゲームブックのごとく、選択肢を選ぶことができます……!

AXMA Story Maker

こちらは有料ですが、優良なゲームブックツールです。

詳しくは筆者の黒歴史、動画を御覧ください。

こちらを利用して作ると、遊ぶ側は選択肢をタップして読みすすめることができます。

作成した作品はAXMAの運営するライブラリに登録できます。

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で、作品をこのライブラリではなく、他のサイトへの投稿やら、自分のサイトで公開したいと言った場合には恐らくライセンス料を支払う必要があると思われます。

筆者もAXMAに問い合わせてみたんですけど、すごく短いメールでの返答ばかり返してくるので本当に筆者の解釈で良いのか不安になるくらいなのですよ。

何かあっても自己責任で、ま、19.90 EURということで、このエントリ執筆時点で2,500円くらいですからライセンス料のお支払いをおすすめします。

あと、環境によっては日本語入力がうなく行かない挙動になったりするので、まずはフリー版で試してみて、大丈夫そうならお金を払うようにしましょうね。

こちらのツールで制作したゲームブックはこちらになります。

終末のヴァンパイア: MY GAME BOOK
オリジナルゲームブックです。 AXMA Story Makerで作りました。 遊んでいただければ、幸いです。 ここをクリック↓↓↓ 終末のヴァンパイア.html にほんブログ村

広井ミチオさん制作の作品です。

プレイして頂ければ一目瞭然ですが

  • 該当パラグラフ以外読者は閲覧できない
  • リンクをタップするだけで次のパラグラフ閲覧可能
  • 精神力と言うパラメータ計算が自動
  • フラグ管理によるパラグラフジャンプを実施
  • BGMを鳴らすことも可能で場面によって変えられる

と言うUIが実現可能です。

Twine

こちらは特に、SugarCubeと言う形式(フォーマット)が使い勝手がよろしいとは思います。

Harloweと言う形式での説明ではありますが、Twineに関して詳しくはこちらのエントリをご参照ください。

こちらも上記のAxma Story Makerと同等のゲームブックを作成できます。

金太郎の微妙な冒険

拙作でお粗末ではありますが、パラグラフジャンプ機能を自動で出来るので、読者はタップだけでメモも計算も不要で読みすすめることができます。

上記作品にはBGMつけてないですけど、つけようと思えばつけられます。

選択肢を選んだあと、やばいと思ったら戻ることも出来るし、プレイの途中経過をセーブもできます。

指セーブも自動、というわけです。

Squiffy

で、筆者が結構注目しているのがこのSquiffyというツール。

本来の想定は全テキストでのゲームブック作成。

でも実はCSSをいじったり、imgタグも入れようと思えばいれられるので、筆者は過去にLINEみたいな見栄え、インターフェイスのゲームブックを作ったことがあります。

まあ、こういうやつですね。

残念なことに英語版しかないのと、元データどっかやっちゃったので再現できませんけども。

こちらのツールも簡単なフラグ管理くらい朝飯前です。

それによりパラグラフジャンプやら、ヒットポイントなどの管理ができます。

ご覧の通り、Axma Story MakerとTwineとも違ってSquiffyはSPA、シングルページアプリケーションなのです。

ひたすら選択肢を選んだあとスクロールして読みすすめることができます。

TwineやFacebook、LINEで多くの方はこういうUIに慣れていると思うので、筆者が今一番好きなのはこちらになります。

まあでも、たしか指セーブっぽいことはできないですね。

どこまでプレイしてたかの記録は自動だったかと思いますけども。

電子書籍とアプリのジレンマ

この様に、いいことずくめなんですけど、肝心のマーケットがないんですねぇ💦

でも、LINEの様なUIで制作されたゲームブックにLifelineシリーズがあります。

結構流行ったと思うんですけどね。

このようなトレイラーも結構作っていて。

調子のいいときは3ヶ月位で新作をリリースしていたのですが、もう新作は出ない予定です。

何で出ないのかなあと思ったら、Lifelineってこのエントリ執筆時点で

‎Lifeline...
‎“フィクションを超えた iPhone & Apple Watch 対応のベストセラーゲーム""- boingboing.net “Apple Watch 版の秀逸なゲーム” - Time.com Lifeline はデジタル版ゲームブックのサバイバルストーリー。iPhone、iPad、Apple Watch を使っ...

120円なんですよね……。

確か発売当初はもうちょっとお高くて240円くらいだったかと思います。

で、ちょっと思い出してほしいのですが、AmazonKindleでのゲームブックの価格帯をみますと。

例えばドルアーガの塔の第1作目は400円なんですよね。

で、どう思われます?

400円だって超激安じゃないですか!?

それがアプリでは恐らく電子書籍よりは手間がかかると思われるのに半額以下の120円。

アプリにした途端に投げ売りとも思われる価格破壊が起きちまうんです💦

アプリは基本無料、課金するパワーユーザーが居るから

スマホゲームアプリは基本無料でプレイできます。

現にほとんどのユーザー、9割くらいは無料でプレイします。

お金を払ってゲームをするという人は1割程度です。

このビジネスモデルが確立してしまっているため、アプリそのものを有料で販売することが非常に難しくなっていると思われます。

ゲームブックって、なかなかゲーム中に課金と言う概念を盛り込むのが難しいと思われます。

筆者が今思いつく課金方法は、謎解きゲームブックみたいなコンテンツで、謎が解けないけど前に進みたいというユーザーに対して課金すれば謎を解いたことになって次に進めると行ったもの。

まあ、でも、そんな風にゲームブック作ってオモロイのかと。

なんか、メ○カリで違法的に販売されちゃいそうですよね。

いずれにせよ、お金を払ってゲームをする、ゲームブックするという商慣行が根付きにくくなっています。

なのでLifelineシリーズも120円、とお安くなっているのではないかと。

それでは手間ひまかけてゲームブックを作っても儲からない。

で、今はLifelineシリーズを管理しているBigFishGamesもスマホゲームから手を引いたのかなあと思っています。

ほか、アプリのゲームブックといえば、iGameBookですが、こちらも残念なことにサービスが終了しました。

ただ、スマホゲーム市場は日本国内だけで1兆円以上あるそうです。

漫画市場は紙と電子併せても5000億行かないそうですから。

スマホゲーム市場は凄いですね。

結局、マーケット次第

つまりは、お金払ってもいいからアプリでゲームブックをやりたい、という人が大勢現れなければアプリ版のゲームブックは定着してリリースされませんよ、という話です。

で、電子書籍版のゲームブックでも作り方によってはUIを良くすることができます。

例えばパラグラフジャンプも、読者に計算させるのではなくて違和感なく読者に質問する形で分岐させるとか。

バトルシステムも簡略化する、あるいは思い切って省くとか。

パラグラフとパラグラフの間にはページを1枚挟んで区切りを分かりやすくかつ関係ないページを誤って見てしまうことがないようにするとか。

作り方一つですね。

制作コストのバランス

ゲームブック制作を継続していくのに重要と筆者が考えているものは制作コストです。

例えばSCRAPさんの謎解きゲームブックは2420円します。

単に書籍と考えると結構高いかなと思いますけど、Amazonレビューは上々で、これほどの満足度を得られるのなら、全然安いと言えると思います。

これ、制作に多くの方が携わっています。

一人や二人じゃないんですよ。

制作日数もかなりかかっているようなので、たしかにこの書籍を1000円代で売っていては赤字だなと思われます。

恐らくLifelineも同様なので、本当は240円じゃなくて、10倍の2400円くらいで売りたかったんじゃないのかなあと思います。

まとめ

で、アプリになると、それはノベルゲームと呼ぶのでは、という意見があると思います。

筆者が思うに、ノベルゲームは

  • テキスト
  • 音声・BGM
  • 立ち絵・背景
  • 演出

この4種類が揃わないとノベルゲームとは言えないと思っています。

ゲームブックは上記すべてを揃える必要はないので制作コストがノベルゲームよりも少なくて済みますよね。

筆者としては電子書籍のゲームブックを応援しつつも、

制作コストのバランスが良いゲームブック制作ツールで制作されたアプリのゲームブックマーケットが成熟

してくれたらいいなと考えています。

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