「くたばれパラドクス」レビュー。文学的で数学的で謎が謎を呼ぶ思慮深いゲームブック。

ゲームブックレビュー

こんにちは。

あるいはこんばんは。

ゲームブック総合サイトの管理者です。

話題のゲームブック、「文庫版くたばれパラドクス」がようやく手元に届きました。

筆者は北海道在住ということで、本州から荷物が届くのには中1日かかります。

発送日当日に届いた方もいらしたようで、非常に羨ましいですね。

先程プレイしてゲームオーバーから抜け出せなくなったので、ひとまずレビューを書きたいと思います。

ネタバレはしてないと思いますが、万一不適切な記述があれば優しくご指摘ください。

短編作品

パラグラフ数は54。

もっとも本作では「章」と言う表現が新たに与えられています。

その方が似つかわしいし、機能的ですらありましょう。

なぜか。

それは後ほど触れると致しまして、分量としては水曜どうでしょう?

一般的なゲームブックとして火吹山が400、ファイタィングファンタジーの流れをくむジョナサングリーンが著作した悪夢の国のアリスが520ですから8分の1に近いですね。

コンパクトに纏まってんのかなと思いきや、度肝を抜かれることうけあいです。

「大丈夫じゃねぇよ! なまら恐かったよ!」

いやー。

それだけ少ないパラグラフ数でよくここまでリッチなコンテンツを生み出せるなと。

ぜひとも手に取り思い知ってください。

(文庫本バージョンは完売でちょっと残念ですが、PDF版がありますのでBOOTHに走りましょう)

純文学的

凄く文学的な描写や構成になっている作品です。

のっけから現れる生き物、なぜ出てきたのか読んでいるうちに腑に落ちるという流れは脱帽。

序盤からこれはやってくれるなと。

さらに凄いと思ったのは表紙にゲームブックという表記がないところ。

すなわち生まれてはじめてこの作品を手にした人でも、ゲームブックとは何か知らない人でも、コンテンツを楽しめるように丁寧に書き上げられているのでございます!

意外に多くのゲームブックって冒頭でルール説明にページが割かれていてなかなか本文に行けなくて面倒くさいですよね。

iPhoneが凄いのは説明書がないことです。

触っているうちに分かると。

つまり、このゲームブックはiPhoneみたいなモンなのです。

ジョブズに感謝しましょうね。

さて読み心地は登場人物の特徴や関係がすらすらと頭に入り、読者は当然ながら主人公としての役割を担うわけですが、感情移入しやすいように言葉を紡いでいるので没頭感もあります。

うーん。

卓越ですね。

とにかく高級な小説を読んでいるような気持ちにさせられます。

しらばっくれてゲームブックと言うことに特に触れず、芥川賞だか直木賞だか良く知りませんけど、応募してみたら何らかの賞が取れるんじゃないの? とすら思いますね。
(まあ審査員たちがクリア出来なくて結末とか分からんと言う展開はありそうですが)

筆者としては、今までゲームブックで楽しんだことがない、という方にこそオススメしたい逸品。

純文学が好きな人でも唸らせるレベルにあるんじゃないのかなあと。

いっその事これを携えて北大文学部にでも乗り込みたいです。

たのもーって道場破りみたいに。

そしてこう叫びたい。

「これを読了してみろォ!」

まー普通に捕まりますけどね。

そして医学部の精神病棟に連れて行かれると思いますのでやめときますけども。

選択肢を選べ

選択肢の選ばせ方もなかなか面白いです。

本文をよく読む必要があるので、正直電子媒体より紙媒体のほうが読者にとっては良いでしょう。

(いや……文庫版は完売なのですが)

さて本作は途中で絶望と隣り合わせの窮地に陥ります。

これは。

まさかね。

伏線が張られていたとはね。

果たして主人公はそれを回収できるのかなと。

手に汗握りますね。

時間を急かさされる場面もあったりしますからね。

この時ほどDIO様にそこにシビれる憧れることもないですね。

そしてなぜタイトルが「くたばれパラドクス」なのかを改めて思い知ることでしょう。

或いはもっと勉強しておけばよかったなあと思うかも知れません。

謎を解け

謎解きや数学的な問題などが殊の外多く、それらをクリアしないと先に進めず、袋小路に陥ります。

正直筆者はお手上げですね。

まあ、「パラグラフジャンプを超えて」も超えられませんでしたからね。

最近謎解きゲームブックが流行ること自体は歓迎すべきことですが、実は筆者はその手のゲームブックは大変苦手なのですよ。

選択肢で純粋に分岐するだけなら別の選択肢を選べばいつかはゴールに辿り着けますが、謎解きは解けなければ基本辿り着けませんからね。

なのでこの物語の結末や全容と言ったものを知るには

  • 日を改めて挑戦するか
  • リプレイが発表されるまで気長に待つか
  • 或いは禁断の全パラグラフ総当りという禁断の手段をとるしかありません

もっともこの作品は全パラグラフ総当りで把握が出来るのでいいんですけど、SCRAPさんあたりの作品になるとゴールまで辿り着けませんからね……。

実際「誰にでも解けるわけではない」と記載がありますし。

SCRAPさんの作品はそれがウリですし、読者層もそれを望んでいますからね。

あ、でも本作にはヒント集が2021年6月中旬にリリースされるのでした!

何というか、至れり尽くせりのサービスの良さですね。

無料でヒント?

課金でもいいような気もしますけどね。

500円くらいとか、或いは投げ銭的に金額は自由にしても良いんじゃないかなーと思います。

表紙イラスト

文章や謎解きだけではなく、表紙イラストも梧桐重吾さんが描いているとのことです。

マジすか!

そいつは凄いです。

表紙

イラスト、女性のようですけど敢えてモノトーンに近い無彩色な感じが物語の深層・真相を表しているかのようですね。

男性ではなく女性というところも非常に重要な意味を持つのでしょう。

でも筆者はクリア出来てないのでなぜかは分かってません。

ヒントやリプレイを楽しみにするとします。

タイトルより下部の空きがありますけど、書籍ってここに帯入れたりしますから、それに対応もしているデザインとなっています。

作品のテーマとも言えるフレーズ「くたばれパラドクス」がタイトルに採用されているのも実にセンスが良いです。

そうですよね。それしか無いですよね。

裏面

で、裏表紙の説明文が綺麗な長方形に収まっているのは本当に高度な編集技術。

大きな明朝体でタイトルが書かれているのも、一瞬模様のように見えていい感じだと思います。

梧桐重吾さんは文章力も数学も謎制作も絵画の才能もあるし、編集技術もお持ちなのかなと非常に驚いています。

まとめ

そんな感じで筆者は自力ではクリアできない難易度ですが、ヒントもリリースされる予定ですのでそれを見て再挑戦したいと思います。

文庫版完売が非常に喜ばしいことである反面、もっと多くの人に読んで欲しいなと願わしくもあります。

筆者は小売店経験が長いもので、このゲームブックをクリアすることが出来なくとも、売ることは出来るかも知れないなあと考えるのです。

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