皆様こんにちは。ゲームブック投稿サイトGameBook.xyzの中の人です。
今から4年11ヶ月くらい前に「真夜中をさまようゲームブック」をプレイしました。
↑こちらの企画の一つとして掲載されていた記事です。
62パラグラフのゲームブック。執筆は津村記久子さんです。
筆者はこの作品に巡りあうまで津村さんの事は存じ上げませんでしたが、
主な受賞歴 | 太宰治賞(2005年) 野間文芸新人賞(2008年) 咲くやこの花賞(2008年) 芥川龍之介賞(2009年) 織田作之助賞(2011年) 川端康成文学賞(2013年) |
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芥川賞をはじめとする、受賞歴の大変多い方です。
文体は「君は~」で始まる浅羽莢子さんを彷彿させるゲームブック調となっており、情景描写や物語の背景など抜群に素晴らしいので、ゲームブックファンにも、津村記久子さんファンにも、文芸ファンにも漏れ無くオススメしたくなる秀作です。
いやあ……。様々なゲームブックをプレイし、作りもしてきた筆者ですが、脱帽モノの素晴らしさですよ。
美術手帖、このゲームブックだけを目的に買ったとしても損しないくらいの勢いです。
四の五の言わずにAmazonポチすることをお勧めします。
以下、筆者のレビューを書きたいと思います。
物語への誘(いざな)い が逸品
凄いのはプロローグとか、最初に主人公は誰でどんな状況かと言う描写がないところです。
読み進めていくうちに、主人公の立場、どんな暮らしをしているのか、家族がいるのかなど、そういうものが掴めてきます。
情景描写も素晴らしく、スラスラ読みながら物語へ誘われて行きますよ。
更に読者は男女どちらでもいい仕組みになっています。
この辺の心配りが行き届いていますね。
なお対象読者は結構大人(いわゆるゲームブック世代の方?)を想定していますね。
主人公はのっけからトラブルに遭遇します。ネタバレがいやなので、本文参照していただきたいんですがが主人公自身のやらかしなんですけどね。
冒頭から選択肢が4つもあり、判断に迷うところですよ。
またそれが全て理にかなった選択肢なんですよね。
とても良く出来ています。
ゲーム性に富んだ構成
ゲーム性もレベルが高いですよ。
何気ない登場人物の描写や主人公の行動に寄って物語の真相が明るみになっていきます。
主人公はちょっとしたことで死んでしまったり、ゲームオーバーになってしまいます。
でも理不尽な終わり方ではなく、結構なるほどと思えるバッドエンドですよ。
そうして試行錯誤するうちに徐々に全容が明らかになっていく作りなので
詰んでしまうということもなく、どなたでもハッピーエンドをむかえられる構成になっています。
その様子はまさにタイトルの通り「真夜中をさまようゲームブック」に他なりません。
さらに、ゲームブックには特有の「運試し」があるのですが、かなり粋な方法になっていますよ。
これも紙媒体、いろいろな記事が載っている雑誌ならではですね。
どんな方法の「運試し」かは、是非ご自身で目を通して頂きたいと思います。
内容が大変に深い
世界観的には「君」の等身大を描いています。
いやーでもドラマというか物語というか素晴らしい等身大です。
うまい表現が見当たりませんが、今までなかったタイプのゲームブックであり、
当然なのでしょうが大変文学的な作品に仕上がっています。
物語の起承転結で言うところの「転」に巡りあった時は、思わず「おっ!」と唸ってしまったほどのめり込み、本当に面白かったですよ。
登場人物が主人公に対してどうしてそういう態度に出るのか、対応の仕方によって相手も主人公に対する行動を変えるところが「かまいたちの夜」みたいで素晴らしいですね。登場人物の息吹を感じます。本当に思考・行動が生きている人物かと思えるほどですよ。
強いて難点をあげると
そんなのないんですけどね。
唯一、ちょっと残念に思ったのは恐らく紙面の関係で一つのパラグラフが「こんな場所にある」事。
いや「こんな場所」にあっていいのですが、それ普通のパラグラフなんですよ。もっと物語の鍵や解決するのに重要なパラグラフが「こんな場所」にあればもっと面白かったんじゃなかったのかなあと思いました。
でも、そんな些細な事は全く作品の質に関係はありません。
ココに書いたこと、読了された方でも「なんのこっちゃ?」と思う方もいらっしゃることでしょう。
それほどどうでもいい事くらいしかありません。
読了後の清々しさとまとめ
恐らくハッピーエンドと思われるパラグラフにたどり着きました。
いろいろなことが主人公の知らないところで動いていることが徐々に分かったときは、難問にぶち当たって解決策が見つかったような爽快感です。
プレイするにあたってアドバイスがあります。
この作品では「紙と鉛筆を用意した方がいい」とアドバイスがありますが、そのとおりだと思います。
物語の深さを感じ取ることが出来ますよ。
アイテムと途中入手できますがそれは記憶でも行けることでしょう。
結構続編も期待できそうな終わり方をしてますね。
続編か、シリーズ化してもらえるといいなあと思います。
今回人気と実力を兼ね備えている作家さんがゲームブックを認めて頂いたことは大変に喜ばしく思います。
ぜひともこの流れが続いて欲しいと思いますし、津村記久子さんにはまたゲームブックを執筆していただければと願うばかりです。
ま、とにかくプレイしてみてください。 面白いですから。
あと、ゲームブック投稿サイトもよろしくお願いしまーす。
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