こんにちは。
あるいはこんばんは。
ゲームブック総合サイトの管理者です。
ゲームブックって今でも売っているの? と疑問に思っている方こそ御覧ください。
いろいろ検索できます。
さて今回は「都会のトム&ソーヤ」のゲームブック最新作、「ぼくたちの映画祭」のレビューを書きたいと思います。
かなりCMなど露出が多いので皆さんご存知かと思いますが、「都会のトム&ソーヤ」が映画になります。
今回そのタイミングでゲームブックがリリースされたと言うわけです。
都会のトム&ソーヤとは
「まちのとむあんどそーや」、と発音するんですね。
筆者は映画のトレイラー動画でタイトルコールを聞いて初めて知りました。
それまで「とかいのとむそーや」と発音してましたね。
もと小学校教諭でもある、はやみねかおる先生が子どもたちに、もっと読書をして欲しいという願いから書きはじめた児童用推理冒険小説のシリーズです。
非常に人気があり17巻まで刊行され、累計発行部数は200万部だそうです。
つまり札幌市民以上の方々に愛読されているという計算になります。
かなり人気があるコンテンツなので、2016年には講談社少年マガジンエッジでコミカライズ出版されています。
主人公は2人。
普通を極めている内藤内人と大金持ちの御曹司で頭脳明晰な竜王創也。
この2人を合わせてトム&ソーヤなのでしょうけど、ソーヤは創也だからわかるけど、トムは? と突っ込みたくなります。
これは内人(ないと)→無いと→とが無い→トム……という連想に寄るもので、読者投票できまったそうです。
さらに内人は祖母仕込みの特殊能力を有し、このスキルが推理や冒険を駆け巡るのに多大な威力を発揮するのです。
もっともゴミ箱を漁ったりする癖があるらしく、それが元になって災難を巻き起こすのも彼が起因となるらしく、自分で揉め事を起こして自分で消火すると言うパターンらしいです。
はやみねかおる先生とゲームブック
実は都会のトム&ソーヤのゲームブックがリリースされるのはこれが初ではありません。
既に2作刊行されています。
これは、はやみねかおる先生ご自身が学生の頃にゲームブックを読んで楽しんだ過去があるからなんだそうです。
火吹山の魔法使いとかツァラトゥストラの翼とかを嗜まれたそうで。
だからその、パラグラフのその、えーと、あの、グレイルクエスト的な……パラグラフは、おわかりですね?
そう言う仕様になっています。
「修学旅行においで」のあとがきから少々引用させて頂きます。
ゲームブック読者の選択次第でストーリーが変化します。
本書で興味を持たれたら、ほかのゲームブックも手にとってみてください。
また違った読書の楽しみがあると思います。
ゲームブックを応援してくださっているので、非常に喜ばしい限りです。
周知されてほしい
最新作の「ぼくたちの映画祭」は、ゲームブック執筆で定評のある藤浪智之先生です。
ちなみに講談社が出版しているゲームブックは、七つの大罪や進撃の巨人のものがありますが、全て藤浪先生の作品です。
逆に言うと、大手出版社が携わる商業的なゲームブックを執筆しているのは藤浪先生だけとも言えるでしょう。
もっと多くのゲームブック作家にこのようなオファーが舞い込むと良いですね。
今回の映画がきっかけとなってゲームブックが再認知されることを非常に期待しています。
ゲームブック事態の需要やらマーケットが増えれば自ずとそうなるでしょうから。
読書好きな生徒は勉強ができるという研究もあり、ゲームでもあるゲームブックなら読書しない生徒でも読むかも知れません。
また既に読書好きな生徒にとっても、小説でゲーム? と独特な構成のゲームブックの仕様に興味をもってくれるのではないでしょうか。
そして子供をもつ親になったゲームブック世代の方も、忘れていた懐かしさから手にとったり、我が子に勧めたり、一緒に読み回したりって言う展開を期待したいです。
それを狙ってか、紙媒体のゲームブックは電子と異なり、カバーがキラキラ光るホログラム仕様になっています。
これは貰って嬉しい贈って楽しいプレゼントとして子どもに買ってあげる親が続出してくれることを希望します。
プロモーション
ゲームブックが出版されたのは6月2日で、映画公開は7月30日。
ゲームブックのサブタイトルが「ぼくたちの映画祭」って。
どう考えても映画のプロモーション・宣伝をしているとしか思えませんよね。
まるで芸能人が自分のドラマの番宣のために朝からずっとバラエティ番組に顔を出している様子を彷彿とさせます。
まあでも、それが駄目なんてことはありません。
楽しいから、いいじゃないですか。
映画そのものもSCRAPさんが手掛ける謎解きが見どころになっているようです。
SCRAPさんは大人気のリアル謎解き脱出ゲームのイベントを多数開催している企業です。
今まで馴染みのない客層にも謎解き脱出が面白いな、自分たちもやってみたいなと思わせよう、彼らを誘導しようと言う目論見が歴然としてますよね。
実に良い取り組みじゃないかなと思います。
多くの企業が助け合って、勧めあって、互いに売上を伸ばそうという意気込みが感じられてグッドです。
だってお金を稼がないと、そのエンターテイメントやコンテンツって継続しないじゃないですか。
お金がないと例え自治体でも潰れるんですよ、夕張市をご存知ですか?
オリンピックが商業的に走って良くないなんて批判を受けたりしますけど、お金があつまるからオリンピックが開催できるのです。
新井白石より田沼意次が世の中には必要なんです。
「白河の清きに魚も棲みかねてもとの濁りの田沼恋しき」
ちょっと違うか。
とにかく日本はお金を稼ぐことが卑しいと言う傾向がありますが、イーロン・マスクやお金配りおじさんが人気であるように、お金を稼ぐこと自体は善です。
ぼくたちの映画祭
よ、ようやくゲームブックの内容に触れられます。
ネタバレしないように気をつけて書きますね。
主人公はジェンダーフリーで中学二年生です。
大人でも子どもでもないという思春期真っ只中ですね。
クラスメイトはぶっ飛んだ生徒ばかり。
その中には一見何事も平凡な内藤内人や金持ち御曹司で成績優秀な竜王創也もいます。
さらに「映画バカ3匹」と呼ばれている生徒もいて、突然「みんなで、映画を撮ろう!」と提案してきました。
あまりに強引な展開ですが、主人公は「映画を撮る」以外の選択肢は取れません。
しかし、何だかとても楽しそうでワクワクしてきます。
どんな映画を撮ろうかなと、迷うことが出来ます。
そこから物語は始まります。
謎解き
ゲームブックには所々で謎解きが提示されます。
児童用を意識して簡単な部類なのでしょうが、それでも難しいものがあるかも知れませんね。
謎解きの多くはコピーを取るなりパソコンに画像を落とし込むなりして、加工等をしないと解きにくい、です。
頭だけでイメージできる生徒は超頭いいですねぇ。
一つの謎解きは、とある知識がないと非常に解くのが困難かと思います。
その事実を知っているか知らないかにかかっているので、いい感じでググれればたどり着きやすくなることでしょう。
ここでくじける生徒が少数であることを望みます。
まあ、クラス仲間やお家の方と相談して、日を改めて挑戦したら解けたりするもの。
諦めないでトライしてほしいです。
リーダーシップ
前述したとおり、クラスは個性豊かと言えば聞こえはいいですが、現実的には変わり者の巣窟。
一つのことを成し遂げようと思っていても、意見が割れ対立し、クラスをまとめると言うのは難しいよね、と言う物語です。
学祭や何らかのイベントの実行委員長や、責任者になってしまうと、神経をすり減らして嫌になることもあるでしょう。
いわばこのゲームブックはリーダーシップを模擬的に体験できる作品となっています。
リーダーシップの経験は、成否とは無関係に体験することに価値があります。
外資系企業がリーダーシップのある人材を求め、フォロワーシップ(と言う用語自体存在しませんが)のある人材には目をくれないのはそういったところです。
日本ではリーダーの言うことに何でも同調するイエスマンが出世しますが、それで日本企業がこれだけ衰退したんじゃないのかなと思えるほどです。
リーダーシップ経験のある人材は、たとえ自分自身がリーダーにならなくとも、どの様にたち振る舞えばリーダーやチームが先にすすめるかが分かるから重宝されるのです。
作中でも主人公が状況がスパゲティのようにこんがらかった状況を、あるときは内人、またあるときは創也に助言や手助けを受けて前進します。
たとえ自分ひとりではどうにも成らないことでも尽力していれば周りが助けてくれるということを体感できると思います。
そのへんのところで本作は非常に教育的な内容となっています。
気負いなくパパママは、義務教育期間のお子さんがいるならプレゼントとして贈るといいと思います。
構成
物語は大きく分けて3種類の流れがあるようです。
謎解きに失敗すると比較的簡単にバッド・エンドになってしまうので、謎解きは必須なのですが、ある程度ヒントであったり、バッド・エンドからヒントを得たりと言う感じもあり、
何度か繰り返して読むとより先に進める様に書かれているような気がします。
物語の流れを阻むのが変わり者のクラスメートたち。
ゲームブックにしては登場人物が非常に多いです。
前述の内人、創也を始めとして、映画狂の3人組、恋愛コンプレックスの生徒、生物が好きな生徒、片思いしている生徒、街の人、もろもろ、さらに犬まで。
これだけ多ければ読んでいて混乱しがちなのですが、全員非常に特徴のあるキャラクターなので、意外にも人間模様がスっと入ってきます。
数々のトラブルを乗り越えて、映画の撮影が完了すると、その映画の出来栄えを文章にて読むことが出来ます。
つまりその映画が3種類あるわけです。
なかなかおもしろい構成だと思います。
分断したシーンを紡ぎあげて一つの映画にまとめるという作業を体感しているかのような気分にさせてくれます。
一つのグッドエンドにたどりついても、別の分岐を選んで他の映画を撮影しよう、という遊び方も出来るんですね。
コロナ禍の映画
エヴァンゲリオンはコロナとは無関係に自主的に延期を何度も繰り返す性質を帯びていますが、通常の映画はそんなことありません。
しかしハサウェイは延期を余儀なくされましたし、都会のトムソーヤの映画も本来は2020年中に公開予定だったものを、延期してこの夏公開の運びとなりました。
コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出を自粛する動きや、飲食店は20時閉店で酒類提供禁止、さらには20時に仕事を終えましょうと冗談とは思えないことを宣う方々もいます。
不要不急の定義って一体何でしょうね。
では人類はまた石器時代にでも戻ればいいのでしょうか。
バカみたいにふざけまくっている方も、それで称賛されお金を稼ぎ、公的にも認められて勲章を授与されたりもしているでしょう。
電気を研究する研究者なんて典型例で、当時は一体何の役に立つのか全くわからない静電気を、多くの科学者が研究を重ね、ついには電気なしには現代社会は成り立たなくなりました。
無駄づくりって非常に重要なんです。
小説や音楽、漫画やアニメ、映画やYouTubeって、確かに人間がただ生存するだけなら必ずしも必要ではないことでしょう。
しかし人間らしく充実した人生を送るためには、人それぞれにあった「無駄」が必要なのです。
そんなのちょっと考えるだけで分かると思うのですが、医療機関が大事でそれ以外の産業が崩壊してもいいっていうんなら、生理食塩水や輸血だけで、エンタメ無用で病棟から外出せずに寿命まで生きていればいいんじゃないでしょうかね。
皆さんはそんな輩の言うことには騙されず、感染対策に気をつけて楽しい映画を観て応援しましょう。
まとめ
映画公開前に、本作を読むとさらに映画が面白く鑑賞出来ると思います。
映画を撮影する苦労というのが垣間見られるし、登場人物に対しての愛着が湧くことでしょう。
ぜひどうぞ。
Kindleでも紙媒体でもありますよ。
逆に映画公開から本作、ひいてはゲームブックが広く周知されることを期待したいです。
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