「護国記」レビュー。敢えてKindleに最適化された21世紀のゲームブック。壮大な叙事詩的小説を堪能せよ。

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さて本エントリでは幻想迷宮書店さんが放った一大叙事詩とも言える大長編ゲームブック「護国記」をご紹介致します。

21世紀のゲームブックとも謳われる革新的な作品ということで心してかかりました。

叙事詩?

大変恐縮ではありますが、「叙事詩」って分からんのでググりました。

Wikipediaによりますと。

民族の英雄や神話、民族の歴史として語り伝える価値のある事件を出来事の物語。

Wikipedia

とあります。

関連項目に叙事詩的映画というジャンルの映画があるそうです。

それは、壮大なスケールで人間ドラマを描くことに重点をおいた映画のジャンルで、他より大掛かりな視野をもつとの事。

つまり護国記は映画のように壮大なスケールで歴史や英雄たちの人間模様を描いたゲームブックと言うことです。

壮大感

ごらんになりましたか、表紙イラストを。

これ、芸術性もすごく高いですよね。

筆者のレベルではデザインがどうこうお伝えするのも野暮です。

純粋に読者が観るだけで何も語る必要がないという。

絵画なのに、テキストはタイトルと作者名ぐらいしかないのに雄弁に物を語っているのです。

もとから幻想迷宮書店さんは卓越した編集力に定評があると筆者は考えているのですが、護国記も容赦ないなあというのがひしひしと伝わってきます。

構想10年、執筆に丸2年をかけて完成させた会心の一本。

それほどの熱意と労力を費やしてこそなせる壮大感なのだろうと、イラストだけではなく本文も、ただの電子媒体・データの塊のはずが、とてつもなく強いオーラを放っているのを感じ取りました。

ルールに驚愕

一番驚いたのは、護国記はダークファンタジーと言う伝統的なゲームブックの世界観に近いものであり、戦闘シーンもあるというのに、ゲームブックによくあるバトルのやり取りが皆無と言うこと。

それだけではありません。

近頃お流行りの謎解きもなく、にゃんたんの様に迷路やクイズやなぞなぞ、鏡のなかへの様にイラストに埋め込まれている何かをさがすと言ったギミックがないのです。

純粋に選択肢を選ぶだけ

これはCYOAと呼ばれる「きみならどうする」シリーズや、デジタルゲームブックLifelineを彷彿とさせます。

理論上は読者に選択肢を各シーンで提供すれば、ゲームとして成立はします。

しかしそれは安易なダンジョン散策に成り下がり、単調になって読者が読了までに飽きてしまいがち。

きみならどうするは児童用ですし、Lifelineはやり取りのあとの音信不通からの通知で再開と言う、実在の人物とメッセージアプリでやり取りしてるかの様なリアル感が読者を夢中にさせる要素を内包しています。

そのどちらでもないので、言うは易く行うは難し。

護国記の真骨頂をのっけから見せつけられた感じがします。

よほどの筆力と巨大な網目のようなパラグラフ遷移を丁寧に作り込まないと、面白いゲームとして成り立たせるのは至難の業だからです。

叙事詩

更にページを開いて驚愕したのが、シンプルな文体なのに今まで見聞きしたことのない単語がところどころ散見されること!

のっけから衝撃を受けました。

そこで膝をついてガクッと来たのかと言うと全くの別で、逆に「こんな表現があるのか」と吸い込まれる様に読み勧めましたね。

Kindleのいいところは辞書が不要なことです。

分からなければ素直に該当単語を選択すれば辞書が別ウィンドウで現れて読みや意味を表示してくれます。

理解したら地の文をタップすれば辞書は消え失せ、再び物語に入り込んでいけます。

余談を言えば、文脈や漢字の並びからある程度意味を推測して辞書を開き、ほぼあたっていたら自分の中でポイントがアップして喜ぶと言う楽しみもありました。

語彙が豊富なことも特徴的ですが、文章そのものも叙事詩と言うだけあり、非常に小説的な文体です。

例えば伊豆の踊り子って、19歳の青年が伊豆旅行にいって踊り子に恋心を抱いたけど叶わず、何事もなく帰路につきましたって言う単なる旅行記で、展開に乏しく内容は著しくプアじゃないですか。

せめて踊り子と付き合うようになったとか、結ばれそうになったけど駄目だったとか、恋のライバルと取り合いになったとか、ジョジョっぽくするとか。

全然そう言う展開もなく、世界観も伊豆ってだけでひねりもありません。

でも文章そのものが非常に美しい文体で書かれ、踊り子の描写や青年の心理描写が卓越なので、読むだけで価値があるから人気なのです。

護国記も読むだけで実に興味をそそられ面白く感じられる文体に仕上げられているのです。

最近は小説を読んでおりませんが、筆者も昔は三浦綾子とか東野圭吾とか楽しんだんですよ。

ただ、護国記の様な文学的表現は今まで読んだことがない発見ですね。

特に敵が迫ってきた緊張感がもうね。

そのときのカーペットの取り扱いとその表現方法がねえ。

まるで美術館を歩き回り、好みの絵画を目の当たりにしたときのように、いちいち文章の表現に立ち止まってじっくりと読み返したのでした。

概要

剣と魔法が存在する世界観。

“高ツ原五国”を舞台としたファンタジー。

主人公はペンは剣よりも強し、愛読家で書庫を管理するライゼ=インカルナ。

ライゼと人からは呼ばれています。

平和に暮らしていたのに突如異変が発生します。

それは想像以上に非常事態。

助かるすべはあるのか。

ともかくも、大切な人だけは守りたい。

だが腕っぷしが弱いライゼはいとも簡単に死に至る。

でもそこはファンタジーの世界。

何度でも立ち上がるのだ。

ナンバーレスパラグラフ

護国記の特徴の一つ、ナンバーレスパラグラフ。

ゲームブックは読者が選択肢を選ぶ事によって行動を変えられるので、その飛び先としてパラグラフ番号が明示され、1という場面でAするなら2へ、Bするなら3へ行け、という表現がなされます。

しかし護国記はパラグラフ番号が表示されていない代わりに、ハイパーリンクで行き来出来るようになっています。

(誤解のないようにいいますと、ナンバーの有無に関わらず、電子書籍のゲームブックは大概ハイパーリンクでパラグラフ移動出来ます)
その反面、パラグラフ番号が明示されていないので、どのパラグラフにいるのかが読者は知る由がありません。

これは、読者としてもパラグラフの番号を頼りに「また来たところだ」「初めて到達した場面だ」と言う情報を得ることが出来ないですし、制作や編集する側としても非常に負荷のかかる手法です。

ただ結果としてゲームブックを全く読んだことがない、という人にとっても非常に馴染みやすいUIと言えます。

後述しますがそれによって読者をもっと物語の深みにいざなうことを可能としています。

制作チームは何らかのツールを使って護国記を紡ぎあげたのでしょうかね。

ナンバーレスパラグラフのゲームブックを作成するには、inklewriterと言うツールがあります。

今は受け付けてないですけど、デジタルゲームブック制作会社、inkleで提供しているゲームブック作成ツール、inklewriterでゲームブックを作成して応募すると、Kindleでナンバーレスパラグラフのゲームブックをリリースしてくれると言うサービスを提供していたことがあったのです。

そのため英語版のゲームブックの中には、護国記同様のナンバーレスパラグラフのゲームブックがあったりします。

ただ前述の通り、このツールを使ってのナンバーレスパラグラフゲームブックの作成は実質不可能なので、inklewriter同等の機能を持つツールを使ったか、あるいは全て手動で制作したかどちらかなのでしょう。

ツール創るのもかなり大変と思われるので、恐らく手動で制作されたのではと筆者は考えていますが。

想像しただけでもとてつもないことを成し得たなと驚きを隠せませんね。

多分……、リンクを張るのすべて手作業と思われるので、膨大な作業量だと思うんですよね。

そのことを思うと絶句してしまいます……。

シームレスフラグシステム

ゲーム全般はゲームブックに限らず、きのこを取ったら大きくなってブロックを壊せる、パワーを集めて分身を作れる、などゲームの流れが変わります。

しかし電子を含め書籍であるゲームブックは、アイテムを取ったらメモをしたり、ハイライト機能を使ったり、と言うように読者に何らかの作業をさせます。

本作ではその必要がまったくないんですね。

ではそれをどの様にやっているか。

恐らくそこにナンバーレスパラグラフシステムが関与していると思われます。

一度来たと思える場面でも、ちょっと異なってたりするんですよ。

すなわち同じと思えるパラグラフでも、実際は異なるパラグラフに読者はたどり着いている。

それによりストレスなく、読者は選択肢をタップするだけで物語を読み進めることが出来るのです。

このUI(ユーザインタフェース)とUX(ユーザエクスペリエンス)には脱帽ですね。

この挙動はTwineやAXMA Story Maker、Squiffyなどゲームブックアプリでならいとも簡単に変数という概念で設置させることが可能なのですが、いかんせんKindleは一介の書籍。

プログラミング言語のような挙動をさせることは不可能なのです。

それをあたかも実装しているかのごとく、パラグラフ分岐だけで実現させている様は知る人ぞ知る感嘆するところとなります。

ものすごくたくさんの似通ったパラグラフが多数存在し、適切にフラグ的な概念によってハイパーリンクのもとに分岐していると思われます。

多分、その膨大なる手間暇苦労は殆ど世に知られることはないのだろうなと。

せめてこのブログエントリだけでも、その大変さはお伝えしたいと思います。

まあ、アニメ制作みたいなもんですよ。

ほんの数秒のシーンにセル画像を何百何千枚と描くでしょう。

それと同等のことが本作においては行われているって事です。

控えめに言って

筆者が理想とし、作りたかったゲームブックそのものですね。

ちかいのは近日新作も発売されるLifeline。

ゲームブックがゲームブックたる所以は選択肢を読者が選ぶシーンがいくつもあると言うところ。

ゲームブックから、ダイスロールやバトルシーン、なぞなぞや迷路、謎解きを抜いたとしてもゲームブックはゲームブックです。

でも選択肢を取り除いちゃうと、それはもはやゲームブックとは呼べない。

ゲームブックの最小構成要因は選択肢の連続なのです。

繰り返しますが、言うは易く行うは難し。

選択肢だけで純粋にゲームブックを書き上げるというのは、非常に困難なのですよ、東大に入るくらい。

その反面、見事書き上げられたなら、UIもUXも最高峰のゲームブックが出来上がると想像していました。

Amazonのレビューも4.5で、評価数が31と人気であることが伺えます。

リリースされてから2年以上経過して初めて今回手に取りましたが、もっと早くプレイしていればよかったなと、それだけが後悔です。

Kindleの機能やUIおよびUXはまるでゲームブックに適していないと考えていましたが、敢えてKindleに特化したゲームブックと言う発想が実にいいです。

21世紀の理想的で最高峰のゲームブックのひとつと言って過言ではないと考えます。

何度でも立ち上がれ

紅蓮華じゃないですけど、炭治郎のように何度でも立ち上がりましょう。

長編作品ということなので、なかなか手にするのを躊躇ったのですが、物語展開そのものはソーサリーの第一部くらいの読了感です。

パラグラフ数は膨大だと思いますので長編とも言えるのですが、読者が体験しうる長さとしては中編と言いますか、パラグラフ数400から500くらいの感覚です。

主人公ライゼは比較的容易に死に至ります。

バッドエンドを繰り返し、試行錯誤をしているうちにループに入り込んじゃったかなと感じることでしょう。

でもやり直してもまた死ぬよと、ああ、繰り返しかなと思いきや……。

やり込むごとに情報を入手したり、この選択肢は駄目だったから別の選択肢、と言うので徐々に抜け出せていく様子を体感できると思います。

これはルールとして認められているか分かりませんが、筆者が愛用したKindleならではの機能をご紹介します。

知りたい方はこちらをタップしてください。

チートはいやだ! という方はまとめをお読みください。

チート

まあ、ゲームブックではよくある指セーブといいますか、タンマ、今のナシの実践です。

Windows版
Mac版
iOS版
iPad版

Windows版やMac版のKindleでは左上、iOS、iPadOS版では右下に「前に戻る」ボタンがあります。

いわゆるブラウザの戻るボタンと同様、ハイパーリンクをクリックする前のページに戻れます。

つまり一つ前のパラグラフに戻ることが出来ます。

これを使えば、わざわざ同じ展開を道道めぐりせずに時短で別の分岐を試すことが可能です。

簡便さと面白さはトレードオフになりかねないので、あまりにも乱用してつまらなくなっても悲しいのでほどほどに。

実はこのように選択肢を選ぶ前のシーンに戻るという機能、TwineやAXMA Story Makerにも付属されています。

読み進められないと嘆く読者に飽きられない様に広く世界的に認められている裏ワザと言って良いのではないでしょうか。

筆者などはその機能があるならバッドエンド多用してもいいじゃんと思ってゲームブック作品を認めたこともありますが、意外に知られてないのかも知れませんね。

チートもゲームブックではあったほうがいいのはチートがあったほうがいいからです。

ではまとめをお読みください。

まとめ

筆者は一つのエンディングにたどり着くことが出来ました。

でも謎の解明や伏線の回収はなされていません。

単純に筆者が該当シーンにたどり着けていないだけと言うには謎が多すぎです。

これはもう、次作の発表を楽しみに待ちましょう。

壮大な作品で高度な文学表現がなされているのに、実に手に取りやすく読み進めやすい高品質なゲームブックです。

これほどの作品で500円、さらにUnlimited対応なのでプライム会員は無料です

(申し訳ありません。ご指摘があり確認しましたらそれはPrime Readingと言う別のサービスです。月々980円のKindle Unlimited会員になる必要があります。お詫びして訂正させて頂きます。)

ぜひお手に取り、プレイしてみてください。

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